神野美伽「42歳で引退を決意したブギの女王・笠置シヅ子さん。〈自分が最も輝いた時代を自分の手で汚すことはできない〉。その美学にも共感して」
朝ドラで話題の笠置シヅ子さん役として音楽劇『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE~ハイヒールとつけまつげ~』の主演を務めた神野美伽さん。『ブギウギ』も後半を迎え、羽鳥に引退をほのめかしたスズ子は「歌をやめることは今までの歌を葬り去ること。君は死ぬまで歌手なんだ。歌をやめるなら絶縁する」と宣言されます。「歌手としてのケジメのつけ方」を現役歌手の神野さんが綴ります 笠置さんと二人三脚だった服部良一の楽曲 * * * * * * * ◆「歌うということ」を生業にして40年 気づけば、自分の一番好きなこと、(おそらく) 一番得意だと考えられる「歌うということ」を生業に生きて来て、すでに40年の月日が流れました。 アッという間と言えばアッという間ですが、一つ一つゆっくりとひも解いてみると、喜怒哀楽、見事なほどに色々なことを経験させていただけた時間だったと思います。 そんな幸せな時間も当然永遠ではなく、いつかそこから離れなければならない時が来ます。若い頃は40年歌を歌い続けるなんてことは想像すら出来ませんでしたが、今その歌ってきた人生の終い方なるものを何となく考えるようになりました。 先輩方の中には80代になられても、まだまだお元気に歌手としての人生を送っておられる方もいらっしゃいます。しかしそれはどの歌手にでもできることではなく、身体的、精神的に並大抵のことではありません。
◆自分なりの「収め」と向き合う 歌手として歌う、歌わない、それを決めるのは具体的に体力、精神力ということより、もしかしたらその歌い手の人生観、物事の価値観といったものなのかも知れません。 過去には、結婚を理由に21歳という若さでスパッと芸能界から身を引いた、山口百恵さんというスーパースターの引退が非常に印象的で、多くの人の記憶に残っていることでしょう。 本当に限られた限られた歌手にしか与えられないスーパースターという勲章。それ故に、与えられた者にしかわからない苦悩というものがあり、望まずともその苦悩を道連れに日々を生きなければならないのです。 私のような半端な歌い手がスーパースターの引き際、生き様に対してどーのこーの言うことではありませんが、半端な私は私なりに、やはり自分の「収め」と言うものと真剣に向き合わねばいけないと思っています。 毎日を何となく歌いながら生きて、何となく気がついたら長く歌っていたという人生を私は望んでいないからです。
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