ホンダ新事業創出プログラムから「あしらせ2」発売。クツ型視覚障がい者向けルート案内機器がナビ精度などを向上
ユーザーの声を反映した、あしらせ改良モデル
2024年10月1日、ホンダの新事業創出プログラム「イグニッション(IGNITION)」から誕生したスタートアップAshiraseが、視覚障がい者向けナビゲーションデバイスの新モデル「あしらせ2」を発売した。デザインの変更や軽量化、測位システムの採用など新機能を盛り込んだ仕様となっている。 【写真】「あしらせ2」をもっと見る ホンダは従業員による技術やデザインなどのアイデアを製品やサービスとして創出し、スタートアップの事業化を支援することで社会課題の解決につなげようという新規事業創出プログラム「IGNITION」の取り組みを行っており、その第1号の製品が視覚障がい者向けナビゲーションデバイス「あしらせ」だ。 出発地点から目的地までの案内はカーナビゲーションのように音声でルート案内してくれるシステムは従来からあるが、音響信号機やクルマの走行音などの環境音を聞いて危険を察知する視覚障がい者にとって、音声案内は注意力を分散させてしまうこともあるという。そうしたなか、あしらせは専用のスマホアプリで設定した目的地までのルートを、左右のクツの中、足の甲と外側側面、かかとの計6カ所に装着した振動デバイスで曲がる地点までの距離、曲がる方向を知らせるもの。 2023年の発売後、ユーザーからの声をもとにソフトウェアの改良が重ねられて7割以上のユーザーが「満足している」と回答したという。一方で、「スマートフォンの位置情報誤差」や「装着時の違和感」、「デザイン性」などソフトウェアでは解決できないデバイスに関連する声もあった。そこでデザインや機能などを刷新した改良モデル「あしらせ2」が2024年10月1日に発売されたのだ。 クツに装着するデバイスを小型化、クツに馴染みやすい丸い形状とするなどユニセックスなデザインに変更。また衛星測位システムGNSS受信機と3次元の慣性運動センサーを搭載し、さらに自動運転の技術を応用した独自の歩行位置推定技術を採用することで、位置情報と方位の誤差をより小さく進化させている。加えて振動デバイスを内蔵するベルト部分の素材をより柔らかい素材に変更することで、歩行時の違和感を軽減しているのだという。 専用アプリによるルート案内は、視覚障がい者にとって歩きやすい曲がり角の少ないルートを提案する従来からのアルゴリズムに加えて、一度とおったルートを記録できる「マイルート機能」、横断歩道や交差点を音声で案内する「道路構造・周辺施設通知機能」も新たに搭載。よりユーザーフレンドリーな仕様としている。 事前説明会には2024年パリ パラリンピックの視覚障がい者柔道女子48kg級(全盲)で銀メダルを獲得した半谷静香(はんがい しずか)選手も登場。2024年7月からあしらせ2を使用し、またパラリンピックの会場にも持っていったという半谷選手は、「歩いて移動しているとつねに振動による情報が足に伝わるので、ルートが合っているのか間違えているのか不安になる時間が減りました。緊張する時間が少なくなったことで、メダルに近づいたと思います」と効果を実感したという。 【製品仕様 あしらせ2(ASV2MA)】 寸法:230×100×30mm 重量:片足につき約55g クツのサイズ:目安22.5~28.5cm 充電:USB-C 充電時間:約2時間 連続作動時間:約10時間 防水性能:IPX5準拠 本体価格:5万4000円(非課税) アプリ基本利用料金:月額550円/年額6000円(税込)