「海のはじまり」成功の理由は「イライラさせるヒロイン」 平成の月9の王道だった「ヤバい女キャラ」たち
「東京ラブストーリー」も「ロンバケ」も「ラブジェネ」も……「イライラさせるヤバいヒロイン」こそ月9の王道
歴代の月9作品の世帯視聴率トップ3は、「HERO」「ラブジェネレーション」「ロングバケーション」だという。まさに月9黄金期であり、この3作すべてに木村拓哉さんと松たか子さんが出演。特に木村さんが演じるキャラクターの職業や服装は、一大ブームを巻き起こすほどだった。 月9の黄金期にキムタクあり。それは誰もが認めるところのはず。けれども私は、「視聴者をイライラさせるヤバいヒロイン」というのも実は大事な要素ではないかと思っている。 例えば「ラブジェネ」。松たか子さん演じる理子は、上司にロン毛を注意された木村さん演じる広告マン・哲平の髪を「わたしが代わりに切ってあげたよ」と断りもなしに切るという暴挙に初回から出る。余計なおせっかいを超えて今だったら大問題である。「ロンバケ」では山口智子さん演じる南が、木村さん演じる瀬名と恋敵のお嬢様(演じたのは松さん)にホテルの券を渡すセクハラをかます。いずれも「サバサバしてマイペース、だけど本命の前では乙女な一面も」な女性像が受けたが、令和の感覚に照らし合わせるとどちらも「ヤバい」ヒロインに映るのではないだろうか。 もっとさかのぼれば恋愛ドラマの金字塔「東京ラブストーリー」も「ヤバい女」だらけだ。ヒロイン・リカと交際中のカンチのもとをおでんを持って訪れるさとみのヤバさは当時も話題となり、演じた有森也実さんは石を投げられたという。でも鈴木保奈美さん演じるリカだって、さとみとカンチを応援すると言いながらカンチに抱きついたり、「かまってちゃん」ぶりがすごい。美男美女だらけの俳優陣というのはもちろん、「どっちのヒロイン派?」と話し合いたくなるような強烈な「ヤバいヒロイン」造形が、日本ドラマ史に残る視聴率と影響を残したといえるように思うのである。個人的には、昔の夢の女の影がチラついて今カノを大事にできないカンチが進化した姿が、夏くんになったのかなと感じた。