首里城唐破風の彫刻完成 富山県南砺市の砂田さん、井波の技で復元「幸せ」
2019年の火災で正殿など6棟が全焼した世界遺産・首里城(那覇市)の再建で、富山県南砺市川西(福光)の井波彫刻師、砂田清定さん(74)が正殿の唐破風(からはふ)の彫刻を完成させた。正殿は首里城の顔とも言える建物で、大正時代の写真を基に往時の姿を忠実に再現した。「後世に残る復元に関わることができたのは幸せなこと。完成してほっとしている」と話している。 砂田さんは井波彫刻歴52年のベテラン。「平成の復元」で首里城美福(びふく)門の山号(さんごう)額を手がけた実績を買われ、工事を担う大手ゼネコンから依頼が舞い込んだ。 唐破風は、高さ1・8メートル、幅8・6メートル。龍(りゅう)が向き合う「あうんの龍」や火焔宝珠(かえんほうじゅ)、雲、カエルが股を開いたような形の蟇股(かえるまた)があしらわれ、装飾性に富む。 昨年、下絵を描き粘土で原型を作り、今年5月から職人仲間や弟子の7人で荒彫りを進めてきた。9月からは緻密な作業を施す仕上げに入り、今月21日に完成させた。
作業の間は、復元に携わる沖縄県の有識者が5回にわたり工房へ確認に訪れ、うろこの数や毛の一本一本まで細かく指導した。龍の顔つきやうろこの模様などは、これまで手がけた表現と異なる沖縄独特のもので、砂田さんは「自分の感覚やアイデアを生かす彫刻とは違い、難しかった。これまでの経験の総仕上げになった」と振り返る。 依頼を受けてからは元日に能登半島地震があり、再び大きな地震に見舞われ壊れないか不安もあったといい、「無事完成してほっとした」と話す。 井波彫刻は伝統の継承に向けて担い手確保が課題となっている。「技や伝統をPRする良い機会になった。後継者育成につながればうれしい」と期待する。 完成させた彫刻は年明けに沖縄へ運ばれ、彩色が施される。正殿は26年秋の完成を予定している。