どうしてスカートはいたらダメなの? 4歳長男の告白を受け止めた母「どんなあなたでも好きだよ」―子どもの“LGBTQ+” 試行錯誤の教育現場と進まぬ大人の理解
トイレは? プールの着替えは? 学校側も試行錯誤の連続
母・優子さんは小学校入学の2年前から学校側と相談を重ねてきた。学校にとっても初めてのことばかり。トイレは? プール授業はどこで着替える? 次々と課題が浮かんだ。 それでも当時の校長は樹さんに「自分の好きな格好で来ていいんだよ」と声をかけた。かつて「障害者用」と呼ばれていた「だれでもトイレ」を使えるようにし、プール授業の着替えは女子更衣室で最後に着替えるか、担任教諭と別室に行くことにした。 こうした配慮もあって、樹さんは学校生活を楽しんでいる。 「楽しい。友だちといっぱいおしゃべりができて、イヤなこともない」
10人に1人はLGBTQ+ 9割が孤立「保護者や教師に言えず」
大手広告代理店の調べでは日本でのLGBTQ+の割合は約10%。小学校のどのクラスにも、その素質を持っている子どもが、クラスに数人はいることになる。 LGBTQ+を支援するNPO団体「ReBit」が実施した学生へのインターネット調査によると、性を自認する平均年齢は14.3歳、初めて周囲にカミングアウトした平均年齢は18.5歳だった。樹さんのように4歳で自認するのは極めてまれだ。 調査はさらに深刻な問題を浮き彫りにした。多くのLGBTQ+の子は孤立しているのだ。 保護者、教職員、どちらに対しても9割超が「安心して話せない」と回答している。7割が笑いものにされるなど学校でハラスメントを受けていることを明かし、5割が心身の不調や精神疾患を訴える。 支援団体「SOGI-Mamii's」の高橋愛紀代表は、周囲の大人がLGBTQ+に対する正しい知識を持つことの重要性を指摘する。 「当事者の保護者と学校が連携するのはもちろんですが、同級生の保護者もきちんとした知識を持つ必要があります。知らないから憶測で決めつけてしまったり、間違った対応になったりするのです」(高橋代表) 樹さんもこれまでに子ども同士で目立ったトラブルは起きていないが、大人は時折、暴走する。2023年12月、保護者会で一部が紛糾した。無理解や嫉妬のような声が飛び交った。 「男なの? それとも女なの?」「特別扱いだ」(いずれも保護者) カミングアウトから5年。樹さんや優子さんはこうした言葉を何度も浴びせられ、そのたびに言葉を尽くしてきた。