どうしてスカートはいたらダメなの? 4歳長男の告白を受け止めた母「どんなあなたでも好きだよ」―子どもの“LGBTQ+” 試行錯誤の教育現場と進まぬ大人の理解
人生初スカートに満面の笑み 母親実感「本当に女の子になりたかったんだ」
カミングアウトから約1週間後、樹さんが人生で初めてスカートをはいた。スカートの裾をヒラヒラさせながら3回まわり、満面の笑みを見せた。 「本当に女の子になりたかったんだって、このときにすごく実感した」(優子さん) それ以来、優子さんは女の子の洋服を買うようになった。髪も伸ばし、リボンで結んだ。 女の子の装いで初めて出かけたのは、東京にある人気キャラクターのテーマパーク。樹さんは終始大喜びで、優子さんは数えられないほど、写真を撮った。 「樹はとにかくすごく楽しんでいた。周りを気にせず楽しんでいる姿をみて、本当に女の子なのだと思った」
幼稚園が誠実に対応 制服は"特注のキュロットスカート"
樹さんが通っていた幼稚園は、親子に寄り添った。男の子はズボン、女の子はスカートがルールだったが、制服の生産工場にかけ合い、樹さんのために特注のキュロットスカートを用意した。 「見た目が変わるから」。優子さんは樹さんの同級生の保護者に知らせた。 「心が女の子だから『くん』じゃなくて『ちゃん』と呼んでとお願いした」。樹さんも自らクラスメートに働きかけた。 園児たちはすぐに受けとめた。「男の子でも女の子でも変わらない。樹は樹だから」。樹さんと3歳から幼なじみの同級生2人は、一緒にソリ滑りを楽しんだあと、涼しい顔で答えた。
誰にも相談できない“孤独” 胸に刺さる保護者の心ない言葉
優子さんは23歳のとき、樹さんを出産。パート従業員として働きながら育ててきた。 LGBTQ+をカミングアウトした子を持つ知り合いはいない。相談できる場所も知らない。一部の保護者からは心ない言葉が投げかけられた。 「カミングアウトが“4歳”だったこともあり、『子どもが遊びで話したことを、親が本気にして大ごとにしている』『男の子、女の子の違いが4歳にわかるわけない』と言われた。かたくなに『樹くん』と呼び続ける保護者もいた」 優子さんはぶれなかった。 「今はもう、そういう世の中じゃない。ただでさえ本人は苦しい思いをしているはずだから親や周りの大人がその思いを増やしちゃいけない」