「SNSでの誹謗中傷」と「昭和のヤジ」は大違い…金村義明氏が明かす「球場で個人情報を暴露されてもシャレで済んだ」根本的な理由
中日と西武の特徴
「羽田耕一さんなんて、“夜のお遊び”で相手をしてもらった女性の源氏名をヤジで暴露されていました(笑)。羽田さんも『あれは知り合いの寿司屋の大将から聞いたんだ』と苦り切っていましたが、まあ、ギリギリでシャレになっていました。また僕はバッターボックスでズボンを触る癖があったのですが、触るとすかさず『どこ触っとるんや!』とヤジが飛びます。確かにシャレにならないものもあり、人種差別的なヤジを飛ばされた時は激怒してバットを持って抗議に行ったこともあります。とはいえ、今のSNSにおける誹謗中傷に比べれば、まだ比較にならないほどの節度がありました」(同・金村氏) ところが金村氏が中日に移籍すると、球場でヤジが飛ばないことに気づいた。いや、もっと正確に言えばヤジが聞こえないのだ。 「昭和のパ・リーグは球場が閑散としていることも珍しくないので、ヤジがよく聞こえるんです。ところがセ・リーグは常に満員ですし、応援団の数も双方すごいでしょ。鳴り物が常に鳴っていますから、ヤジを飛ばすファンがいたとしてもかき消されるんです。唯一の例外は阪神で、やはり関西のチームなのでパ・リーグと同じヤジ文化があります。一方、同じパ・リーグでも僕が移籍した時の西武ファンは全くヤジを飛ばしませんでした。選手への声援が飛ぶだけでしたね」
エゴサの問題
金村氏が「昭和のヤジと今の誹謗中傷は違う」と断言するのには理由がある。野球解説者としての金村氏はSNSで誹謗中傷のターゲットにされることがあるのだ。つまり金村氏はヤジと誹謗中傷の両方を経験しており、悪質性を比較することができる。 「僕は解説者として考えたこと、思ったことは包み隠さず視聴者の皆さんに伝えるという方針を貫いています。そのため一部のファンを怒らせることもあるようです。かつてCSの放送局でSNSと連動した実況の解説を担当した際、『金村は黙れ』と投稿され、思わず『じゃあ見るな』とマイクに喋ってしまったこともありました。誹謗中傷が殺到した経験もありますから、今の選手が感じている不安や恐怖は、僕自身の問題としてよく理解できます」(同・金村氏) 冒頭で紹介したように、悪質な投稿には毅然として法的処置を執り“一罰百戒”を狙うという手段もある。一罰百戒とは一人の人間を罰することで、他の大勢に自制を促すことを指す。 「SNSにおける誹謗中傷は絶対に許されないのは事実ですが、その上で、今の選手にも気をつけてほしいことがあります。それは今の自分がエゴサーチ、つまり“エゴサ”をし過ぎていないか、チェックすべきだと思うのです。時にはエゴサをしない勇気も必要でしょう。ネットから距離を置き、罵詈雑言を全く見ない環境に自分を置くということも、野球選手には求められている気がします」(同・金村氏) デイリー新潮編集部
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