流されて吹く主審、本質から外れたゴール取り消し…日本が直面した悲しい”現実”と、それでも感じた”地力の差”【パリ五輪】
試合の序盤に斉藤光毅がわかりやすいバックチャージを受けながらファウルにならなかったとき、非常に悪い予感がしたが、残念ながらそれは的中した。国際試合では時折見かけるが、周りの雰囲気に流されて笛を吹く類のレフェリーだった。強くアピールされれば、それに流されて吹く。そして抗議の強さを踏まえ、次からの判定で辻褄を合わせていく。行儀の良さでは超ワールドクラスの日本代表にとって、一番相性が悪い主審だ。 これまで「大岩ジャパンはセルフジャッジをせず、試合に深く集中するのが素晴らしい」と書いてきたが、実はそれさえ万能ではなかったと認めざるを得ないのが、悲しい。 この類のレフェリーに対しては、大げさでもフェイクでも、見苦しくても、スペインのようにセルフジャッジしてアピールを繰り返したほうがいい。抗議もしたほうがいい。それで判定が動くのだから。大人しくしていると、認めたようだと雰囲気で判断される。サッカーは決して美しさだけの競技ではない。 とはいえ、判定のストレス云々を除いても、地の力に差があったのは確かだ。今回は過去に対戦したスペインほどの強さは感じなかったが、それでもチーム戦術は非常に優れていた。日本は細谷や高井がヘディングでバーやポストを叩く場面があったが、細谷の1ミリ場面を除けば角度が狭いシュートが多い。 カタールW杯ではペナルティーエリア内かつゴールエリアの幅で生まれた得点は全体の8割という統計が出ていたが、まさにその8割の場所には、スペインがなかなか入らせてくれなかった。残り2割のスーパーゴールが、スペインには出て、日本には出なかったという見方もあるが、たとえば33分の三戸舜介の惜しいミドルシュート場面と、フェルミン・ロペスの得点場面は、シュートブロックの質に差があり、単純に決定力だけの差とも言い切れない。 このディテールの差を埋めるには、高いレベルでの試合経験がもっと必要だ。今後のクラブでの成長を経て、このチーム、いや、この世代から、2026年W杯のピッチに立つ選手が何人出るか。不満も競技的な失望も強く、後味の悪い試合だったが、未来を思い浮かべると非常に楽しみな選手たちだった。それが救いだ。 [文:清水英斗]
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