『舞台 千と千尋の神隠し Spirited Away』でロンドンに滞在。福地桃子に訊いた、千尋という役から得たもの、演技に対する想い。
胸の中にある想いをまっすぐに届けること
──幼少期からドラマや映画の現場が身近にあった福地さんですが、2016年にデビューしてからこれまでを振り返って、作品に対する向き合い方は変わりましたか。 「この数年は、やりたいことがより明確になっていると感じています。よく取材などしていただくと『10年後どうなっていたいか』というような質問をいただくことがあるのですが、将来の姿を想像することよりも、10年後の私が振り返ったときに、ああしておけばよかったという後悔がないように今を生きていたいと思うんです。だから、巡り合わせてもらえる作品に対して責任も持って、一生懸命向き合いたいなと思っています」 ──ここ数年は特に大河ドラマ『鎌倉殿の13人』や映画『湖の女たち』など、観る人の心に強く残る作品に出演されていますが、作品選びはどのように? 「この作品で自分はどんなことができるか、そこにどう存在していられるか、を考えるようにしています。ただ、それは自分が作品を深く知ることのできるきっかけのひとつであって、どうなっていくのかは正直未知な段階のことがほとんどなので、挑戦するという選択をする時はやっぱり一生懸命出来そうだなと想像ができた時だと思います」 ──『湖の女たち』で演じた、週刊誌記者の池田は、挑戦的な役柄だったのではと思いましたが。 「撮影期間のことを思い返すと、とてもいい時間でした。原作で池田は男性でしたが、映画では女性に変更しています。劇中は一人で過ごすことも多かったのですが、池田は常に誰かのことを考えているんです。人を繋ぐ役目をしていたので、ひとりでいる感覚もなくて。そういった役は新鮮でしたし、今回の役を通して、三田佳子さんや浅野忠信さんとのシーンで、大きく心が動くシーンがあったので、その撮影はとても印象的でした」 ──印象的な役柄が増えるほど考えることが増えそうですが、もし役づくりや演技で悩んでしまったら、どうやってその状態を脱却しますか。 「人と話してみることで、心が救われることがあります。悩みを相談することもあるし、他のことを話していても、会話の中に助け舟がやってくるような感覚になることがあって。監督や共演する方などの状況を共有する人とでなくても、例えば、友人と何気ない話をしていたけれど、それがすごくいいヒントになって。これで私は大丈夫だと思って家に帰る、というのはよくあります。それから、悩みとは違うのですが、いつか、撮影が始まる前の段階、例えばロケーションを下見したり撮影の準備をしたりするところから参加してみたいという気持ちがあります。設定もあるので時と場合によると思いますが、なるべく長くその場所に身体を置いて、より近いところで参加できる機会があったらいいなと思っています」 Photos:Rei Hair:Chikako Shinoda Makeup:Natsumi Narita Interview & Text:Miho Matsuda Edit & Styling:Shiori Kajiyama