東ちづる×マメ山田×ドリアン・ロロブリジーダ×エスムラルダ マイノリティが本音で語る「不条理」「もやもや」「生きづらさ」
俳優業をしながら、30年以上にわたり様々なボランティア活動をしてきた東ちづる。彼女は極めて個性的なパフォーマー集団「まぜこぜ一座」の座長でもある。団員の多くは障害のある、社会的には「マイノリティ」と言われる人々だ。しかし彼らは明るくニュートラルに障害や社会と向き合い、見事な舞台を作り続けてきた。今回、彼らが世に問うのは映画! 『まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり』について、東ちづるとマメ山田、今大ブレイク中の『八方不美人』メンバーでもあるエスムラルダと、同メンバ―、ドリアン・ロロブリジーダが集合。この映画について大いに語った! (聞き手・構成◎さかもと未明 撮影◎本社 奥西義和) 【写真】東京・キネカ大森での記者会見もにぎやかに * * * * * * * ◆障害のあるパフォーマーの活躍 東 私たちが「まぜこぜ一座」を旗揚げしたのは2017年。日本では海外とは違って障害のあるパフォーマーの活躍する場が少ないので、それを変えたかったんです。 障害のある団員で構成される一座が、見世物小屋をイメージした舞台をするということで話題になり、記者会見は大入り満員。内心「明日からすごーい!」と。でも、それを放送してくれた媒体はゼロ! ――ええ? なぜでしょう? 東 なぜなんでしょうかねえ。取材された放送もありましたが、マメさん(日本一小さい俳優・手品師)や車椅子・義足ユーザーやダウン症などの主要メンバー全員が映っていなくて。 ドリアン・ロロブリジーダ(以下ドリアン) そうそう。 ――なぜそんなことが起きるんでしょう? 東 私も知りたくてテレビ局に聞いたんです。すると「私はいいんですが、代理店さんが」とか、代理店は「スポンサーさんが…」、スポンサーは「視聴者さんが…」、と言い訳。「それじゃダメじゃん」と思ってこの映画を作りました!
◆笑えて、ドキドキする映画 エスムラルダ(以下エスム) ダイバーシティーとか、多様性のある社会とかいうけど、現実は違うのよね。 東 そうなの。今回も当初、話題になればと脚本家に超有名な人を選んで依頼しました。でも「暗い映画じゃなく、コメディにしたい」というと、「障害者をどう扱っていいかわからない」と悩まれちゃう。挙句「1ヵ月ワークショップをしてから…」と言われ、お金も時間もないので残念ながら実現できなかったんです。 それなら、エスムさんはもともと脚本家で、自身がドラァグクイ―ン。マイノリティの気持ちもわかるからとお願いしたの。勿論大正解! ――なるほど。エスムさんは、脚本を書く上での工夫は? エスム 法廷ものなど色んなアイディアは出たんですけど、「笑えて、ドキドキして」と詰めていくと、「やっぱ殺人事件、密室ミステリーじゃない?」と。(笑) 東 「なら、私が殺されたい」って頼んだの。私は今まで事件を解決する側の役などが多かったから、殺される役が回ってこない。だから経験がなくて。 ――え、そうなんですか? 東 テレビ業界の暗黙の了解みたいなものがあるんですよ、実は。 エスム そこで東さんに死んでいただくことにしたんです。それも、何度も。(笑) ――拝見しましたが、アーティスティックな映像でした。殺された東さん、すごく美しくて。 東 本当に? 嬉しい。照明とカメラマンさんの力です。 衣装やメイクもよかったでしょう?キャストの皆さんのように、多くの人と違う体形だったり、車椅子だったりすると、衣装は大変なんですよ。でも衣装担当が、素晴らしいものを用意してくれた。メイクも通常の映画の倍の人数を頼んで。 ――特に「だうんしょーず」の峰尾さん。可愛くて、踊りも素晴らしく感動しました。 東 彼女は普段、「ダウン症のある人は、ダウン症の特徴がなくなるから」とメイクしてもらえないことがあるの。彼女らしくきれいだったでしょ? ――はい。逆にドリアンさんは地のままが素敵で。 ドリアン そうなのよー、今回は自分役だから、役作りがなくて楽だった。でも進行役だから、異常にセリフが多くて。これはエスムさんの意地悪だと思うんだけど。 エスム いやいや。(笑) でも、カンペなしでやり切りましたね。内心すごいなと。 ドリアン 私が出ずっぱりで、みんな飽きたんじゃないかと思うんだけど。 東 その「圧」の強さで持つのよ! ちなみに何故この一座に入ってくれたの?
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