子どもの心の健康にも「沈黙は金」、その大きな効果と処方箋 「子どもの発達に極めて重要」
自分がお手本を示す
「親自身が静寂を好きでないと、子どもに静かにするよう言い聞かせるのは難しい」とプファイファー教授は言う。読書習慣と同じだ。親が本を読んでいるのを見ると、子どもも本を手に取るようになる。 同じように、親が窓の外を5分間眺めていれば、その姿は子どもの目に留まる。「子どもは非常に敏感なアンテナを持っています。意識的に、そして無意識的に、親が何に心地よさを感じるのか、敏感に感じ取るのです」
「おしゃべり禁止ゲーム」をする
修道院のような静けさをとことん追求するのは失敗のもとだ。小さなことから始めよう。音を立てない静かな時間をゆるく、とりとめもなく重ねていくと、人は落ち着き、沈黙にもっと集中する余裕が生まれる、と『Silence(沈黙)』の著者ジェーン・ブロックス氏は言う。 「おしゃべり禁止ゲーム」(おそらく親がよくやる車内ゲームの定番)は「おしゃべりしない」を「沈黙」に変える方法の1つだ。ゲームの目的は、一定の時間、あるいはなんらかのランドマークが見えるまでの間、全員が黙ること。一番長く黙っていられた子どもが勝ち。 相手がティーンエイジャーの場合は、自然な形で静かな時間をただ持てばよい。音楽をかけてしまう、あるいは「学校はどう?」のような、大した答えが期待できない薄っぺらな質問をしたくなる衝動をぐっとこらえること。 「大人は沈黙を、さけるべきものと考えてしまいます」とブロックス氏は言う。「沈黙に慣れていない人は、沈黙を居心地悪く感じがちです」。その居心地の悪さに身を委ねること。すると沈黙の後で、思いもかけない言葉が聞けるかもしれない。
自然に耳を傾ける
沈黙は屋内でも屋外でも有益なものだが、プファイファー氏の研究によれば、セミナー室よりも街中の庭園で沈黙を体験したときの方が、退屈を感じずリラックスの度合いも大きかったことが示されている。 子どもたちに屋外で静けさを体験してもらうには、音の地図製作者になりきって、自分のお気に入りの静かな場所を示した地図を描いてもらうといい。音集め競争をして、「静かな音」から「一番静かな音」のランキングを作る、といった工夫もありだ。森林浴で自然と触れ合うのも楽しい。
「音」浴を体験する
グラスを使って、シンギングボウルを自作する。グラスを何個か用意して水を入れ、濡れた指でグラスの縁を撫でて、高い音や低い音を出してみる。それが難しいときは、子どもにハミングをさせて、その振動を体で感じてもらう。この振動効果はマッサージみたいなものだ、とプファイファー氏は言う。「心と体はつながっているので、体がリラックスすれば、それが心に影響を与えますし、その逆も同じです」 別のやり方もある。コズミック・キッズの共同創始者ジェイミー・アモール氏は、内面に集中させるのに鐘を使う。子どもたちはあぐらをかいて座り、両手を膝に乗せた状態で鐘の音を聞く。音が消えたら両手をお腹に持っていくというものだ。
文=Yelena Moroz Alpert/訳=夏村貴子