カタール、ガザ停戦交渉の仲介を中断 ハマス事務所も閉鎖の方針
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエル軍の停戦交渉を巡り、仲介国カタールの外務省は9日、交渉の仲介を中断していると発表した。声明では、紛争当事者が「政治的な目的のために戦闘を継続し、交渉を理由に正当化しているのを目の当たりにしてきた」と批判し、双方が「停戦に向け真剣に交渉する意思」を見せれば再開すると強調した。 カタールは首都ドーハにハマスの政治事務所を置いており、米国やエジプトとともに停戦交渉の仲介を続けてきた。だが、交渉が停滞する中、10日前の協議で関係国に対し、「今回の交渉で合意に達しなければ仲介努力を中断する」と伝えたという。これまで仲介国として中心的な役割を果たしてきただけに、交渉が今後、いっそう難航するのは必至だ。 ロイター通信などによると、10月の交渉では短期間の一時休戦案が協議されたが、ハマス側が拒否した。このため、米国はカタールに対し、ドーハにハマスの事務所を置くことは「歓迎できない」と伝達したという。カタールもハマスに事務所を閉鎖するよう伝えたと報じられたが、カタール外務省は「ハマスの事務所を巡る報道は不正確だ」としている。 停戦交渉では、バイデン米大統領が5月に3段階の停戦案を発表し、ハマスが後に受け入れを表明。だが、ハマスがイスラエル軍の完全な撤退を求めているのに対し、イスラエルが新たにガザ地区の一部地域への軍の駐留継続などを要求したため、交渉が停滞している。 地元メディアによると、イスラエルのガラント前国防相は7日、ハマスが拘束している人質の家族に対し、「(イスラエル軍が)ガザ地区でやることはもうない」と語り、ネタニヤフ氏が「政治的理由」で戦闘を続けようとしていることを示唆した。ガラント氏は人質解放には交渉が不可欠だと主張しており、ネタニヤフ首相が5日、「相互信頼の欠如」を理由に解任を発表していた。 ガザ地区では9日も激しい戦闘が続いた。各地で食料不足などの人道危機も深まっている。ガザの保健当局によると、これまでの戦闘による死者は少なくとも4万3552人となった。【カイロ金子淳】