話題作からコメディー、絵本、ビジネス書まで 新たな視点生む書店員の2024ベスト2冊 書店バックヤードから
今年も残りわずか。今回は書店員さんに、この1年に発行されたあまたの本の中から「私のベスト2冊」を選んでいただきました。話題を呼んだ本から人生にも生かせるビジネス書、重厚なテーマの絵本まで、3人それぞれの感性に刺さった多彩な本が並びました。自分一人では手に取らない本との出合いは、新たな気づきをもたらしてくれます。(司会 藤井沙織) 座談会メンバー 百々典孝さん(紀伊国屋書店梅田本店)/佐々木梓さん(ジュンク堂書店大阪本店)/大橋崇博さん(流泉書房) ■話題になるのには理由がある 藤井 百々さんと佐々木さんは、三宅香帆さんの本を選ばれていますね。 百々 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)。すごい話題になった本だけど、タイトルだけ見ると「言われんでも分かってるわ。忙しくて余裕がなくなるからや」とか、「俺は読んでるし」って思うでしょ。 藤井 …おっしゃる通りの自己完結をして、手に取らないままです。 百々 何でこれが話題なのかと思って読んでみたら、明治から時代ごとに、どういう本がどんな人に読まれてきたのか世相が分析され、情報社会の現代は-というお話。本好きにこそ読んでほしい。 藤井 あまのじゃくな性格が邪魔をしていました! 佐々木 こちらもめっちゃ売れています。『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー)。推し活で見た舞台や映画の感想をSNSに書くときに、好き!尊い!以外のことを、分かりやすいスリーステップで書けるようになろうという本。 藤井 確かに、好きすぎて語彙力がなくなるときってありますよね。 佐々木 あふれるほどある文章術の本の中でこの本が心に響いたのは、なぜ言語化したほうがいいのかという部分。SNSで発信しないにしても、その作品のどこがどう好きなのか。それを自分の言葉で表せないと、ネットにある誰かの言葉に流されてしまう。 藤井 それは怖い。言語化していくと、自分の好みの傾向も見えてきそうです。大橋さんの選書は表紙からしてコメディー小説。 ■令和は呪いが通用しない?