HD-2D版『ドラクエIII』が発売間近 “古き良き”と最新技術との調和が生む、壮大な冒険の幕開けへの期待感
スクウェア・エニックスより、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下、『ドラクエIII』)が明日11月14日、Nintendo Switch・PS5・Xbox Series X|S・Steam・Microsoft Store on Windows向けに発売される。 【写真】HD-2D版『ドラクエ3』試遊版のゲーム画面 本作は、1988年にファミリーコンピュータ用に発売されたRPG『ドラクエIII』を、ドット絵と3DCGを融合したグラフィック表現である「HD-2D」を活用してフルリメイクしたもの。かの不朽の名作が、美麗な映像表現や新たなコンテンツを携えて現代に再臨することとなる。 なお本作のリリース後、2025年内にはHD-2D版『ドラゴンクエストI&II』の発売も控えている。「ドラゴンクエスト」シリーズの第1作~第3作は物語や世界観につながりがあることから“ロト三部作”と呼ばれており、時系列的に最も古いお話が描かれるのが『ドラクエIII』。ゆえに本シリーズの歩みをいま一度たどる、あるいはこれから足を踏み入れようという人は、まずこのHD-2D版『ドラクエIII』を手に取るのがピッタリというわけだ。 待望の『ドラクエIII』発売を直前に控えた今回は、本年9月末に開催された「東京ゲームショウ2024」での試遊版におけるインプレッションを踏まえ、その完成度や期待したい点についてお届けする。まだ購入を迷っているという方は、ぜひ本稿を参考にしてほしい。 ゲームを開始すると、幻想的な森の中にひとり佇む主人公の姿が。その後、謎の声の主からいくつかの質問を投げかけられ、それに答えていくうちに主人公の「性格」が決定付けられる。本作では、主人公や仲間にそれぞれ「性格」があり、それに応じてレベルアップ時に成長しやすい能力も変化するとのこと。 詳しくは割愛するが、この性格判断においては思わずうならされるような仕掛けもあった。ちなみに筆者は「正直者のようですね」との結論を下され、「失敗を恐れすぎなきらいがあるので、ときには勇気を持って前へ進め」的なありがたいお言葉も賜ることに。早くもゲーム側から手玉に取られているような感覚になり、思わずクスリとしてしまった。 性格判断を終えて本編が開始すると、主人公は母親に「今日はとても大切な日」と叩き起こされ、剣と盾を身にまとい、荘厳な城を訪れて王さまに謁見したのち、旅立ちとなる。当然のごとく、旅立ちの経緯や目的は登場人物たちにより語られるのみだ。 しかし美麗なCG表現によって、目覚めの朝に窓から差し込む光は柔らかく。ドット絵で描かれる登場人物たちは、ボイス付きとなったおかげもあって表情をそこはかとなく想像でき。身支度をする主人公が剣を鞘に収めた瞬間に、「キン」と響く鍔鳴りの音も心地いい。 プロローグのストーリー展開は昨今の大作ゲームに慣れきった身からすると様式美ともとれるあっさりとしたものだが、HD-2Dに刷新されたグラフィックや、視覚的にも聴覚的にも増強された演出面のおかげもあって一気に物語に引き込まれた。 むしろこれでも、プロローグ時点では演出を“盛りすぎない程度”に意識して留めているのかもしれない。そう思うとなおさら、この序章に漂う静謐さが“嵐の前の静けさ”にも感じられ、これから幕を開ける壮大な冒険への期待感が際限なく高まっていく。 ストーリーラインや作品の持つ空気感はオリジナル版を忠実になぞりつつ、ビジュアル面で大きな進化を遂げた本作。ひとたび冒険にくり出せば、遊びやすさを高めるさまざまなアップデートや、遊びの幅を広げる新要素にもつぎつぎと出会えた。 なかでもプレイヤーが“目的”を見失わないための配慮ぶりは素晴らしく、「ルイーダの酒場」に向かう場面では、メッセージウインドウにて酒場の場所をマップ画像+矢印で示してくれた。またメニュー画面から“次の目的”をいつでも確認可能。 さらに、誰かと会話する際には会話中もしくは会話直後にワンボタン(PS5ではオプションボタン)で会話を“記憶する”こともできるようにもなっていた。記憶した会話は、メニュー内の「おもいで」から閲覧可能とのこと。往年のRPGをプレイする際にありがちだった、重要そうな会話を自前でメモする儀式はもう必要ない。 戦闘面においては、過去のリメイク版から追加されたAI戦闘および「さくせん」システムが本作でも引き続き利用できるのがありがたいところ。倍速戦闘が可能となっている点も時代に即した変革を遂げたポイントだと言える。 仲間にしたモンスターで編成を組み、NPCが率いるパーティーとの対戦を行う新コンテンツ「モンスター・バトルロード」も本作の目玉のひとつ。ここでの対戦はモンスターに対して「さくせん」を設定し、後は見守るのみ。細かく指示を送る必要がない手軽さと、「さくせん」に応じて味方モンスターがどう行動するかを予想立てる戦略性が両立する、奥深いコンテンツとなっている。 『ドラクエIII』のリメイク作品として決定版的な完成度であることは疑いようがなく、“ロト三部作の一番古いお話が描かれるから”という以外にも、いま最もプレイすべき「ドラクエ」である根拠が多数詰め込まれているHD-2D版『ドラクエIII』。発売は明日、11月14日だ。
山本雄太郎