帰ってきた子どもの父親。美羽(松本若菜)の心に巣くう夫への罪悪感 『わたしの宝物』3話
ドラマ『わたしの宝物』(フジ系)は、夫以外の男性との間にできた子どもを、夫の子と偽り、産み育てる「托卵」を題材に描く。神崎美羽(松本若菜)と夫の宏樹(田中圭)は仲の良い夫婦だったが、結婚から5年が過ぎ、美羽は宏樹のモラハラに悩まされている。だが、幼なじみの冬月稜(深澤辰哉)と再会したことで、美羽の人生は大きく動くことになる。3話、子どもの栞(しおり)が生まれてから優しくなっていく宏樹と、それに伴って加速する美羽の罪悪感が色濃く浮かび上がる。 【イラストで見る】ドラマ『わたしの宝物』
“優秀なママ”が呪縛になる?
チクリ、と引っかかったセリフがある。美羽が無事に出産し、一人で退院準備を進めていたときに看護師が投げかけた言葉だ。「初産なのに一人でテキパキして、優秀なママですね」 「優秀」を辞書で引くと「ほかより一段と目立って、優れていること」といった意味が書いてある。看護師のセリフを曲解すれば、初産は、何もかもが初めての経験で一人では何もできず、家族や他者の力を借りまくる母親は優秀ではない、とも捉えられるようにも思う。 美羽は、2話で宏樹から「父親の役割放棄宣言」をされたことで、実質すべて一人で子育てを受け持つことになった。どんな状況においても、いわゆるワンオペ育児を課されたことになる。今後の暮らしを考え、できるうちから一人でできることは済ませよう、と考えるのは理解できる。 しかし、そんな様子を第三者が「偉い」「優秀」「頑張ってる」といったような“評価”をしてしまうと、誰も幸せにならないのではないか。称賛を受けた側は、その言葉に縛られて肩身が狭くなるかもしれないし、もちろん周囲の力を借りながら育児をしている側だって、間接的に非難を受けることになるだろう。 大変な状況であるにもかかわらず、なんとか踏ん張り、一人で立ち回っている母親もいる。だが、そうした事実が、一人では頑張りきれず他者に頼る母親の存在を否定するものになってはいけない。思考の至らなさから生まれる称賛は、母親たちに新たな呪いを植え付けることにつながるのではないか。