元阪神の中田良弘氏は亜大を中退…プール監視員のアルバイトを行った

元阪神・中田良弘氏【写真：山口真司】

　ゼロからの再出発だった。元阪神投手の中田良弘氏（野球評論家）は1978年、亜細亜大1年夏に野球部を退部し、大学も中退して横浜市内の実家に戻った。しばらくブラブラした後、室内プール監視員のアルバイトをしながら「“どっか社会人チームに入れたらいいなぁ”なんて考えていた」という。そんなある日、横浜高OBでもある社会人野球・日産自動車関係者から電話がかかってきた。「お前1回、練習に来い」。この誘いが中田氏の野球人生を好転させた。 【画像】ドラフト注目のはずが…まさかの指名漏れ　目は虚ろで会見に臨む 　横浜高1年夏に痛めた右膝の状態がずっと悪かったこと、厳しい上下関係が嫌だったこと。中田氏はこうしたことが理由で亜大を1年夏過ぎに中退した。「自分には向いていないと思いました」。次の見通しがあってやめたわけではない。「野球はやりたいよなぁと思っていた」というが、特にアテもなし。といって、いつまでもブラブラするわけにもいかない。そこで、とりあえずはじめたのがプールの監視員のアルバイトだった。 「何かしら、しなきゃいかんと思っていたら、家の近くに室内プールがあったのでね。監視員をやって、終わった後に体を鍛えて泳ぐのもいいかなと思ったんです」。自ら動いたのはこれだけ。「社会人野球のどっかセレクションじゃないけど、何か行けたらいいなぁとか考えていた」というが、積極的なアクションまで起こすことはなく、アルバイト生活が続いていたそうだ。その流れが変わったのが、家にかかってきた電話だった。 「『日産自動車野球部の村田っていうんだけど、横浜高校出身なんよ』と言われて『ああ、そうなんですか』なんて話をして『お前1回、練習に来いよ』と言われたんです。村田さんって大先輩だったんですけどね」。もともと中田氏は高校卒業後の進路として社会人入りを希望。一時期、日産自動車入りの話も浮上したが、恩師からの勧めなどもあって亜大進学を選択した。そんな経緯もあって、声がかかったようだ。 　中田氏にとってはうれしい限りの誘い。「『わかりました』と言って、練習に行ったんです。日産の監督は倍賞明さん。倍賞千恵子さんの弟さんで、妹さんが倍賞美津子さんなんですけど、その倍賞監督に『ピッチングしてみろ』と言われて、その時の僕は休み肩で調子が良くて、バンバンいい球がいったんですよ。で、『明日から来い』って。それで日産に入ることができたんです」。もう失うものは何もない。やるだけやってみようと誓った。