【#司法記者の傍聴メモ】「人を傷つけるだけの人生なんてイヤでした」 闇バイト繰り返した“ルフィ事件”実行役リーダーが法廷で語った後悔
■“リーダーとしてのメンツがつぶれる” モンキーレンチで後頭部を強打
約2週間後。次に紹介された“案件”の対象は広島市の時計店兼住宅だった。この日は仕事の予定があったが、「Kim」から「遅れてもいいから来て欲しい」と言われ、石川県でギリギリまで仕事をしてから新幹線で広島駅に向かったという。この事件で永田被告は、「Kim」に“ある提案”をしていた。 *永田被告「犯行道具にモンキーレンチを加えて欲しい」 中野の事件で、被害者から激しく抵抗されたため、「モンキーレンチがあればすぐに制圧できる」と考えたという。 広島の現場に向かう実行役6人は「Kim」からの指示を受けた。 *指示役「Kim」「殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません」「(永田被告が)モンキーレンチでじゃんじゃんやってくれます。ただし殺してはいけません。リーダーの指示に従ってください」 実行役6人は、高齢の夫婦と40代の息子3人が住む住宅に押し入った。永田被告が2階にあがると、他の実行役が息子から激しく抵抗され、つかみ合いになっているのが目に入った。自身もそこに加わり、息子の顔を殴ったが、3人がかりでも息子を制圧することができなかった。 “まずい…” 永田被告は自分が加わったのに息子を制圧できない状況に焦った。「頼りにしてる」と言われた“仲間”の前でこの事態をおさめることができなければ、“メンツが潰れる…リーダーとしての立場も潰れてしまう――” 準備していたモンキーレンチを手にとり、息子の後頭部めがけて「フルスイングした」という。息子は頭から出血し、周りには血だまりができた。永田被告は“死んでしまったかもしれない”と感じたというが、その後父親に金庫を開けさせ、現金約250万円や腕時計など137点・約2439万円相当を奪って逃走した。一時意識不明の重体となった息子は、現在も脳に障害が残っていて会話や意思疎通が難しく、24時間介護が必要な状態だという。 この頃、強盗の法定刑を調べたという永田被告。「5年以上」という数字を見て「強盗をしたら懲役5年」だと勘違いし、「どうせパクられる(逮捕される)から何回やっても変わらない。パクられても5年で済む」と感じていたという。また、「息子にとんでもないケガをさせてしまったので、ガラ(身柄)を隠して憧れのKimさんのように遠隔で闇バイトで実行役を集めて、強盗や特殊詐欺をさせる指示役・胴元になりたい」とも考えていたという。 指示役になるにはいわゆる“飛ばし携帯”などを準備しなければならず、競艇の軍資金に加えて金が必要になった永田被告は、さらに犯行を続けた。 年が明けた2023年1月には千葉県大網白里市のリサイクルショップに押し入り、男性店長の顔を殴って頬や鼻の骨を折る、強盗傷害事件を起こした。しかし、金品を奪うことができず報酬を得られなかったため、その日のうちに永田被告は「Kim」に新しい“案件”を紹介するよう迫った。それが狛江事件だった。