「まじめなことを話しても引かれない場所を」 Social Book Cafe ハチドリ舎店主・安彦恵里香
「Social Book Cafe ハチドリ舎」店主、安彦恵里香。広島市の平和記念公園から徒歩3分。古い雑居ビルの2階の窓には毎夜遅くまで明かりがともる。核問題、差別と人権、ジェンダー不平等……多様な社会課題を扱うイベントを月に30本続けるソーシャルブックカフェ「ハチドリ舎」。店主の安彦恵里香はマイクを手に、いつものフレーズでイベントの始まりを告げる──。 【写真】店内は社会課題解決にひもづく本ばかり * * * 店の奥に広がる木づくりのデッキの手前に、音響機材を置いた机がある。そこがイベントで司会を務める安彦恵里香(あびこえりか・45)の定位置だ。 「まじめなことを話しても『引かれない』場所がほしいと思って、このカフェをつくりました」 デッキ上のこたつに座るゲストスピーカーを紹介すると、必ず店のコンセプトを説明する。椅子に腰かけ、柔らかな表情で話を続ける。 「昔から周りの人に核問題とか政治の話とかをすると、いつも『すごいね』とか『えらいね』とか言われて浮いてしまって。いちばん傷つくのは『めんどくさい』って言葉……」 ハチドリ舎という店名の前につく「ソーシャルブックカフェ」は安彦の造語だ。「社会的な」あるいは「人々が集う」ブックカフェ。そばを流れる川の向こう側には緑豊かな平和記念公園がある。米軍が広島に原爆を落とした8月6日には毎年、式典が全国中継され、一帯は季節を問わず国内外の観光客でにぎわう。店は大通りに面してはおらず、入居するのは築50年を超す雑居ビル。決して「入りやすい」店構えではないが、被爆地・広島を学びに来た観光客や、相談ごとや悩みを抱える人たちが一人また一人と店のドアに手をかける。 運営の中心はほぼ毎晩開くイベントだ。半数は定例企画で、参加者が性のあり方を語り合う「セクマイBAR」、在日コリアンと交流する「BAR在日」、憲法に則して時事問題を考える「弁護士BAR」などがある。残りは単発企画で、ゲストが新たなゲストを呼ぶこともあれば、持ち込み企画、ドキュメンタリーの上映も。津田大介(51)や安田菜津紀(37)ら著名なジャーナリストも毎年登壇し、お笑いコンビ・ウーマンラッシュアワーの村本大輔(44)はすでに30回以上の独演会を開く。 ■「被爆者と友だちになる」 核兵器の問題を自分ごとに 2017年の開店から続く企画は「『6』のつく日 語り部さんとお話ししよう!」。広島原爆忌の8月6日にちなみ、毎月6、16、26日に被爆者と机を囲み対話ができる。月に1度、ハチドリ舎を訪れる岡本忠(80)は1歳で被爆し、いまも腕や背中にやけどの痕が残る。10月26日にはスタッフの瀬戸麻由(33)の通訳に助けを受けつつ、観光客らに自らと家族の体験を語った。参加者がそろうと、安彦と瀬戸はいつも最初にこう伝える。