パリは最先端ファッションやおしゃれなものであふれているイメージかもしれないが…シャツはシワシワ、セーターは毛玉だらけのフランス人がカッコよく見えるワケ
外務省発表の『海外在留邦人数調査統計』(令和4年度)によれば、フランスには36,104人もの日本人が暮らしているそう。一方、40代半ばを過ぎて、パリ郊外に住む叔母ロズリーヌの家に居候することになったのが小説家・中島たい子さんです。毛玉のついたセーターでもおしゃれで、週に一度の掃除でも居心地のいい部屋、手間をかけないのに美味しい料理……。 とても自由で等身大の“フランス人”である叔母と暮らして見えてきたものとは? 【書影】中島さんが”等身大のフランス人”である叔母とパリで過ごして気づいたことを綴ったエッセイ『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』 * * * * * * * ◆外国の人の洗濯って恐っ、と フランスのキッチンで、叔母ロズリーヌに教わった料理やお菓子の詳細について、メールで何度も彼女に確認していたら、誕生日に『お菓子 タルトとケーキなど レシピ80』というタイトルの分厚いレシピ本がドーンとフランスから送られてきた。これは暗黙に 「もう私に聞かないで、自分で勉強しなさい!」と言っているのだ、と解釈した。 でも相手は、気分次第のフランス人。ほとぼりが冷めるまで、キッチンから少し離れて、他のライフスタイルに目を向けて、気づいたことを書いてみようと思う。 叔母の家のキッチンの裏口を出ると、そこはガレージにつながっていて、貯蔵室があり、ランドリーがあり、洗濯物を干す裏庭にも続いている。 洗濯で思い出すのは、子供のとき、叔父の一家が夏休みにうちに滞在していて、洗濯をしていた叔母が、洗濯物をバンバン! と叩いていた光景だ。キッチンのテーブルに洗い上がった厚手のアウターのような服を広げて、彼女は手のひらで叩いてのばし始めたのだ。私と母はびっくりして見ていたが、叔母は 「このまま、少しここに置きます。いいですか?」と母に訊ねて、母は「かまわないけれど、日本は湿気があるから、そこでは乾かないと思う」と返していた。 フランスはあれで乾くのだから、乾燥しているのねぇ、いいわね、と母はうらやましそうに言っていたが、私はバンバン! と叩き続ける叔母を見て、外国の人の洗濯って恐っ、と思った。
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