AWS、生成AIサポート拡充でMicrosoftに迫れるか Amazonの取り組みを解剖
差別化に成功しているVPC
Amazonが他のクラウドサービスプロバイダと大きく差をつけているとして胸を張るのが、データベースを顧客自身のクラウドに収納したままで生成AIのカスタマイズができる、同社の安全で分離した仮想プライベートクラウド(VPC)だ。 イベントで登壇したBooking.com社も生成AI利用の際には、利用者が意図せずに入力する「個人を特定するデータ」をまず排除してから回答を生成すると前置きするなど、データの安全性とプライバシーは企業にとっても死活問題だが、AWSのクラウドサービスVPCではそれがかなうとしている。 最後にあがったのが、生成AIチップのイノベーションだ。半導体を独自開発しているAmazonでは、NitroハイパーバイザーやGravitonプロセッサといったコストパフォーマンスの高い製品のアップデートを発表。また、機械学習のトレーニング専用の半導体Trainiumや、サーバーCPUのGravitonの最新版も発表され、2024年にはこの新型半導体を活用したサービスを開始する予定だ。
人間が中心となる好循環と人間の創造力の重要性
一連のAWS生成AIサポートの拡充の発表や、データベース、機械学習への取り組みが示されたのち、人間とデータ、生成AIのフライホイール(好循環)を強調したAWSイベントでの基調講演。 人間がイノベーションを創造し、開発をリードし、フィードバックを提供するという、人間が中心となった生成AIの成功を提唱し、AWSが取り組んでいるスキルアップや次世代の教育、奨学金制度についても言及した。 また、誰でも簡単に生成AIのアプリケーションを作成できるAWS PartyRockを紹介。その名が示す通り、楽しみながら簡単な操作で生成AIアプリを作成し、公開すれば誰でも閲覧、利用、再構築ができるもので、クレジットカードの登録やAWSのアカウントさえ不要、ソーシャルメディアのログインがあればすぐに始められるとして利用を奨励している。 データや生成AIのイノベーションが急速に進む中、なおも大切なのは「人間」である私たち一人一人が、独自のインプットやアイデアを提供することである、と基調講演は締めくくられている。競合との差別化を図りたいAmazonが、今後ライバルに歩調を合わせつつどのような革新を見せるのか注目したい。
文:伊勢本ゆかり /編集:岡徳之(Livit)