AWS、生成AIサポート拡充でMicrosoftに迫れるか Amazonの取り組みを解剖
ベクトルデータベース
次に言及があったのが、ベクトルデータベースの拡大だ。 画像や文字、動画といった非構造化データに渡ってセマンティック検索を実現するベクトルデータベースが生成AIモデルの独自性を高められる分野の一つ。生成AIモデルを利用することで、キーワードやメタデータに頼ることなく、クエリに対して最も関連性の高い類似データを探し出すことが可能になる。 Amazonは7月にAmazon OpenSearch Serverless用にベクトル検索機能をプレビューモードで提供。以来「素晴らしい牽引力」を生み出したとして今後一般提供を開始する予定で、ベクトル検索機能はBedrockのみならず、他の分野でも展開していくと意欲を見せている。
生成AIとゼロETL
生成AIアプリの分野では、インタラクティブなダッシュボードやレポートを作成できるAmazon QuickSightや、患者と臨床医の会話を分析することで臨床ノートを作成するAmazon HealthScribeなど、生成AIやコーディングの経験がない人にも利用しやすい、展開済みのアプリに続くアプリの登場を予定している。 ちなみに今回のイベントでは、患者に対する医師の比率が圧倒的に少ない中低所得国でのがん治療に、革新をもたらした生成AIのHurone AIの例を紹介し、AIが人々の生活や医療の分野で世界を変革できることをアピールした。 Amazonが2022年のイベントでも唱えていた「ゼロ ETL」。複雑なデータのニーズがある企業にとって、面倒でコストのかかるETL無しに、異なるソースやフォーマットのデータを統一させることは主要な課題となっている。 この作業負荷をなくそうというのがゼロELTで、これまで数か月、数年かかっていたパイプラインの構築やコードを無くして統合するというもの。「データファブリック」と呼ばれる技術を用いて、データの互換や相互運用をしているクラウドもある。 この分野ではMicrosoftが、企業向けオールインワン分析ソリューション「Microsoft Fabric」を5月に展開しており、一部のアナリストの間ではAmazonやGoogleよりも優位にあると称賛されている。Amazonの出遅れ感は否めず、またGoogleも同様、オープン形式でのソリューション作成を急いでいる。 より顧客ベースが大きく、より強固なサービスの幅を持つMicrosoftは、優勢であるもののデータシェアリングの簡易化で頭角を現しているDatabricksやSnowflakeといったライバルとは、ミラーリングで本格的に対抗する構え。進化を続けなければ追い越されかねない分野でもある。 Amazonでは引き続きゼロETLビジョンへの投資を続けると表明、これは昨年のAmazon AuroraがAmazon RedshiftとのゼロELT統合に対応したことに代表されるような、自社のデータベース統合からの継続的事案。イベントでは、これにAurora PostgresやRDS for MySQL、DynamoDBが加わり、ほぼリアルタイムで分析ができるようになったと発表している。