【漫画家に聞く】中学も高校も同じなのに話したことがない……微妙な距離の男女が急接近するラブコメが尊い
中学も高校も一緒なのにあまり話したことがない、でもちょっと気になる人がいる……なんて経験、誰にでもあるのではないか。5月中旬にXに投稿されたオリジナル漫画『中学同じだけど喋ったことないトモダチ』は、そんな関係の男女がひょんなことから仲を深めていく姿にニヤニヤしてしまう、クオリティの高いラブコメだ。 微妙な距離の男女が急接近するラブコメ『中学同じだけど喋ったことないトモダチ』 クラスのマドンナ・花咲と中学校が同じだった木村。周囲から羨ましがられるものの、特に話したこともなく“どこか遠くの存在”として距離を取っている。ある日の下校時、木村はバス停に座っている花咲と遭遇して、木村は気まずそうな表情を浮かべるが――。 本作を手掛けたのは、2024年5月から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載を開始した『廻天のアルバス』で原作を担当している牧彰久さん(@aki_maki)。木村と花咲の距離感に可愛らしさといじらしさを覚えてしまう本作を、どのようにして作り出したのかなど話を聞いた。(望月悠木) ■「木村くんはほぼ僕なんです」 ――今回『中学同じだけど喋ったことないトモダチ』を制作した理由は? 牧:担当編集さんが代わったタイミングで、1番最初に描いた読切作品です。その担当編集さんからは「君にしか描けないものを描いて」と言われたのですが、「どんな作品を作るか」という段階で長く悩みました。ただ、「これで行こう!」と思いついてからは、すんなり最後まで描けました。 ――中学校が同じだけど喋ったことのない男女の物語ですが、どこから着想を得たのですか? 牧:「そういえば、そういう微妙な距離感の同級生(女の子)がいたな……」という僕自身の記憶が元になっています。そこから徐々に肉付けしていきました。ただ、僕の場合は卒業まで疎遠なままだったんですが(笑)。 ――イチャラブ展開にはならず、適度な距離感を保ちながら徐々に仲良くなっていく様子が高校生らしくて良かったです。 牧:僕の実際の思い出が元になってるので、距離を縮めることはせず、そのまま描きました。ある意味、木村くんはほぼ僕なんです。 ――目が点になったり瞳孔を開いたりなど、登場人物のいろいろな表情が描かれており、単調にならないように工夫されていました。 牧:おっしゃる通り、ずっと表情が単調ですと読むのが疲れてしまいます。たまにデフォルメを効かせてコミカルに。真面目な所はカッコ良く。そういう緩急は大事にしています。 ――木村と花咲がバス停のベンチで座って話すシーンは視点が固定されているからこそ、2人の精神的な距離感がより伝わりました。ここのページの視点を固定させた狙いは? 牧:今お話ししていただいた通りです(笑)。ここのシーンで僕自身が一番表現したかったことは気まずさと微妙な距離感です。「その2つをどうしたら面白い見せ方になるか」と考えた結果、こういうコマ割りになりました。 ――印象的なシーンで言うと、雨が止むのと同時に2人の中にあったモヤモヤ感が解消されるところも、まさに晴れやかでした。 牧:「気持ちの良い、スカッとするページになれ!」という気持ちで描きました。セリフなし、キャラも小さめなど、過去の自分が小洒落たことをやろうとした魂胆が垣間見えます。でも、良い絵ですね。 ――今後はどのように漫画制作を進めていきたいですか? 牧:現在、週刊少年サンデーで『廻天のアルバス』というファンタジー漫画を連載しています。こちらでは私は原作という立場で、絵は箭坪幹先生にお願いしています。とにかく面白いものになるよう全力でやってますので、よろしければ読んでみてください。
望月悠木