【有馬記念】松島オーナー「ドウデュースは救世主」「倒れないけどダービーは…」/インタ前編
G1・5勝馬ドウデュース(牡5、友道)が、有馬記念(G1、芝2500メートル、22日=中山)でラストランに挑む。所有するキーファーズの松島正昭代表(66)が、長年の友人でもある武豊騎手(55)や愛馬への思いを語り尽くした。ロングインタビューを前編、中編、後編の3回に分けてお届けする。 【写真】追い切りを終えたドウデュースを笑顔で見つめる松島オーナー 【キーファーズ松島正昭代表インタビュー=前編】 -今のお気持ちはいかがでしょうか 気持ちというか、感謝しかないですね。みなさんに感謝です。なかなかこんな気分は味わえないですからね。しかも(デビューから)3年半も長いこと。こういう結末があるんやったら、最初からもっと余裕を持ってたんですけどね。いつもそう思います。天皇賞とジャパンCを勝つんやったら「先に言うてや」みたいな(笑い)。ほんまに強くなりましたね。感心しますわ。あんな馬、いないでしょう。 -ドウデュースとはオーナーにとってどんな存在ですか 救世主ですよ。さすがに会社がつぶれるほどではないですけど「そろそろあかんな」というのはありましたね。ツイてます。ツキしかないですね。「どうやってあんな馬を選んだんですか」ってよく聞かれますけど、分からないです。知ってたら、みんな買いますよね(笑い)。奇跡ですよ、ほんまに。なかなかないですよね。もうこんな馬は(自分の所有馬から)出てこないでしょう。最高潮を味わわせてもらいました。古馬3冠なんて、できたら最高でしょうね。 -武豊騎手はデビュー前から素質を見抜いていたそうですね (新馬戦の前に)初めて調教で乗ってからすぐ電話がかかってきて「これは走りますよ」って言ってました。ダートへ行くみたいな話もあったんですが、武くんが「いや、これは芝へ行きましょう」と。「ほんまに大丈夫?」みたいな感じでしたね。(そういう馬が走るとは限らないと)僕らは慣れてますから。内心では「またあかんのやろな…」っていう気持ちもありました。でも「普通に回ってきたら勝ちますよ」って言って、本当に勝ちました。2着も(のちにG2を勝つ)ガイアフォースでしたが、余裕でしたからね。まさか、あんなに強くなるとは…。分からんもんですね。(初戦から3連勝で)朝日杯FSを勝った時には「ほらね、言ったでしょ」って言われました。 -その朝日杯FSは武豊騎手にとっても初制覇となりました その時に武くんから「来年はクラシックへ行きましょう」と言われました。何万頭も乗って何千勝もしてる人が言うんやから「楽しみが増えたわ」と思いました。うれしかった…本当にうれしかったです。「これがG1か」と。それも朝日杯を勝ってないジョッキーにプレゼントできました。(武豊騎手は)22回目でしたからね。「そういう巡り合わせを持った馬なんかな」というのは感じました。その時は何も考えてなかったですけど、今から考えたらマイルのG1を勝ったのは種牡馬としても大きいですよね。それも(翌年にマイルCSを勝つ)セリフォスとかに勝ったんですから。 -翌年にはダービーも勝ちました もう、夢見心地でしたね。 -武豊騎手は、いつもドウデュースが勝つと「松島さん、倒れてるんちゃうか」などと心配しています あれはネタですけどね。(G1初制覇の)朝日杯の時はすごかったです。それからダービーはむちゃくちゃうれしかったです。あとはネタですね。さすがに死ぬほどは…(笑い)。なんぼなんでも、倒れないでしょう。でも、ダービーの時はちょっとやばかったです。知らない世界でした。未知の世界に足を踏み入れた感じで。あんなに人が入ってる競馬場は初めてでしたし(歓声が)地響きのようでした。あの日、レースが終わって表彰式の前に地震(府中市は震度1)があったんですが、それぐらいすごかったです。あのダービーに出た馬はみんな(出走18頭中17頭が)重賞を勝ったと聞きました。すごいですよね。そんな年はなかなかないんやないですかね。 -武豊騎手との関係性は、ファンの間でも認知されています ほんまにありがたいですよ。それもすべて「武豊人気」ですけどね。出会ってからもう25年、馬主になってからは9年ですかね。いろんな歴史があります。「武豊」という偉大な人に対して、もちろん裏切ることもないですし、みんなで(一緒に)やってきましたから。ジャパンCの時は「オーギュストロダン(ディープインパクト産駒の欧米G1・6勝馬)に乗りや。こっち(ドウデュース)はライアン(ムーア騎手)でいくから」って話をしてました(笑い)。もちろん、これもネタですけど。レース後に武くんは「よかったでしょ、僕で」と言ってましたね。 -どのあたりに武豊騎手のすごさを感じられますか アメリカへ行っても、フランスへ行っても、アイルランド行っても、みんなが「ユタカ・タケ」を知ってますからね。今年の秋に行ったアイルランドで、武くんと一緒にクールモア(世界最大級の競走馬生産グループ)のホテルに泊まったんですが、そこに「世界のベストジョッキー」という英語の本があったんです。それに武くんが載ってて「俺やん!」って。ビックリしましたね。すごいジョッキーばっかりの中に。デットーリはいたけど、ライアン(ムーア騎手)は載ってませんでした。本人も「まさか俺が載ってるとは…」と驚いてました。けっこう自慢してましたね(笑い)。ヨーロッパで評価されてるのはすごいですよ。やっぱり「武豊」の存在はすごい。その日はクールモアの関係者と食事をして、次の日にエイダン(オブライエン調教師)のところへ行きました。エイダンが車で武くんを横に乗せて、オーギュストロダンやシティオブトロイ(今年の欧州年度代表馬)の調教も見ました。それからオーギュストロダンの馬房に行って記念撮影もしました。あらためて、すごさが分かりました。地方と海外を合わせたら5000勝もそろそろですし、G1はとっくに100勝を超えてるみたいですね。「ほんまにすごい人やわ」と思います。(つづく)