大津市の保護司殺害、2割が「自宅で面接」などに不安…活動拠点は不便で面接場所の確保に課題
大津市保護司殺害事件の発生から今月下旬で半年となる。罪を犯した人らの立ち直りを支援する現場に与えた影響は大きく、法務省の調査には保護司全体の2割が今後の活動に不安を示した。各地で安全対策の強化が模索されているが、自宅以外の面接場所の確保など課題は多い。(山下真範、広島総局 綾木佑我)
複数人で対応
広島市にある保護司の活動拠点「更生保護サポートセンター」。今月8日、広島保護観察所の保護観察官や保護司らが集まり、保護司の安全対策を話し合っていた。
法務省の有識者検討会が10月に公表した報告書では、事件の再発防止策として、自宅以外の面接場所の確保や担当保護司の複数指名などを促している。
同所企画調整課長の賀中伸彦さん(55)は「予算が増えないと、新たな面接場所の確保が進まない」と懸念し、保護司の女性(70)は「1人で面接をした方が日程を調整しやすいが、複数人での面接など選択肢は多い方がいい」と語った。
同所では事件前、保護司が原則1人で対象者の面接などをしていたが、現在は複数で対応するよう保護司に呼びかけている。事件後、保護司になる予定だった人が、家族の反対を理由に辞退したケースもあり、保護司らの不安を把握するため、対象者について保護観察官と気軽に話し合える関係づくりにも力を入れる。
保護観察官(24)はこれまで以上に保護司と密に連絡を取るようにしているといい、「対象者との相性を見極めるのも観察官の仕事」と話す。
70人が退任意向
全国に約4万7000人いる保護司は、法相が委嘱する非常勤の国家公務員だが、給与は支給されず、実質的には民間のボランティアだ。保護観察付き有罪判決を受けた人らと自宅などで面会し、生活上の悩みや就労などの相談に乗って、立ち直りを支援している。
大津市で事件が起き、保護司らの間には不安が広がった。法務省が事件後、約4万4000人の保護司に聴取した調査では、今年8月末時点で70人が退任の意向を示し、保護司の委嘱手続き中だった19人が辞退。約2割の約9700人が今後の活動に不安を示し、内容としては「自宅での面接」などが多かった。