習近平の「経済無策」と「国民監視」で、いよいよ「日本叩き」の動きが…!いま警戒すべき「リーマンショック」と「福島処理水」のヤバすぎる関係
日本で高まる「チャイナリスク」への警戒感
2012年に日本が尖閣諸島を国有化した時も中国で反日ムードが高まった。中国政府は曲がりなりにも歴史的根拠などを提示していたが、今回の対応はまったく異なる。 「日本の海洋放出は無責任」と感情的な怒りをぶちまけ、官製NGOを使って国民を誘導しようと躍起になっており、今や日本人は「人民の敵」扱いだ(2023年9月5日付ニューズウイーク日本版)。 そのあおりを受けて日本をテーマにした観光施設が軒並み閉鎖に追い込まれており、日本ではチャイナリスクが指摘されるようになっている(5月27日付日本テレビ)。 日本人に対する迫害は今のところ起きていないが、抑圧された政治環境にある中国の大衆心理の変化は非常に速い。
中国国民に蓄えられる「怒りのマグマ」
前編でも指摘してきたように、米ハーバード大学のアンソニー・サイチ教授は「中国の中間所得層の間でこれほど高いレベルの不満やいらだちを見聞きしたことがない」と指摘している。 悲惨な経営を強いられている中小企業の経営者たちは、生活の基盤である自宅や車を失い、借金返済のためだけに働いていると言っても過言ではない。政府の支援が厚いとされる主要国有企業ですら、特に鉄鋼業界で給与カットと支払いの遅延が急増している。 中国政府は、都市に2人に1台の割合でカメラを設置するような監視国家であることを理由に平静を装っているが、21世紀に入り、治安維持に充てる公共安全費が常に国防費を上回っている。中国とは国民の怒りのマグマを強烈に抑え込んでいる国であることを忘れてはならないだろう。 その怒りが外国人にむけられる危険性を軽視してよいものだろうか。
日中関係の改善のために
コロナ禍の3年間で中国に居住する日本人は減少したが、それでも10万人を超える。 戦前、特に昭和期の日中関係は悪化の一途を辿ったが、中国在住邦人への迫害が相次いだことが関係悪化を助長していたことを忘れてはならない。 過去の失敗を繰り返さないためにも、あらゆる角度からチャイナリスクを検討することが喫緊の課題なのではないだろうか。 さらに連載記事「中国EVの「弱点」が発覚して販売台数が激減…! 国民の不満を映す「中国版お年玉」の寒すぎる事情」でも、中国国民の苦境の内容について解説しているので、ぜひ参考としてほしい。
藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)