日本三景のひとつ「天橋立」行ったことある?“神が育んだ海底湧き水の恵を食す”ツアーに参加してみた
京都府の北部に位置し、宮城県の「松島」、広島県の「宮島」と並ぶ日本三景のひとつ「天橋立」がある宮津市は、リアス式海岸と対馬暖流と日本海固有水が交差し、栄養も豊富な絶好の漁場。ここには漁獲量や鮮度などの理由で市場に出回ることが少ないブランド海産物が多く、それらは地域住民のほか、現地を訪れる旅人だけが楽しめるものとなっている。 【写真】地産食材で料理メニューを開発し、地酒とのペアリングを行う「宮津・天橋立マリアージュ」 現在、宮津市では、天橋立を旅する楽しみを提案する「天橋立ガストロノミー~神が育んだ海底湧き水の恵を食す~」を実施中。絶景を見つつ新鮮な魚介を味わうという、なんとも幸せな体験をレポートする。 ■そもそも「天橋立ガストロノミー」とは? 「天橋立ガストロノミー」は、観光庁が推進する「地域一体型ガストロノミーツーリズム推進事業」の一環として、全国数百件の応募から選ばれた6事業のうちのひとつ。 同事業は外国人旅行者から需要が高い「日本の食」について、魅力的なガストロノミーツーリズムコンテンツを造成し、インバウンド誘客や地方誘客を促進する取り組みを支援するもので、京都府宮津市のほかには、岩手県久慈市や石川県小松市などが選出されている。 ちなみに“ガストロノミー”とは、フランス語で「美食学・美食術」を意味し、単なる美食ではなく、その食材を育んだ地域の自然や歴史、文化、風土を感じながら、現地を旅して食を楽しむことを指す。 京都府宮津市では、地産食材でメニューの開発を行う「宮津・天橋立マリアージュ」と、食文化の学び体験コンテンツを集めた「宮津ガストロノミーツーリズム」の2本の柱で、宮津市の新たな魅力を創出することを目的としている。 今回は、一流の料理人が地域の食材の磨き上げをサポートする「JTB★料理マスターズシェフコンサルサービス」から、日本料理の渡辺大生さん、イタリア料理の奥田政行さんを招き、地域の食材を使用し、地元産の日本酒やワイン、地ビールとのペアリングを意識した新たなメニュー6品を開発。これらは今後、現地の施設で提供される。 ■「宮津・天橋立マリアージュ」のメニューを堪能 宮津湾で採れた新鮮な海鮮料理と温泉が楽しめる宿「天橋立荘」では、宿泊客に提供される会席料理に「天橋立ガストロノミー」のメニューが登場する。 まずは、地元で採れたカンパチやサワラなどのお造り。こちらは通常提供しているもので、寒い時季に肝が太ってうま味が増すというウスバハギの薄造りもある。 そして、天橋立マリアージュ企画で生まれた、奥田シェフ監修の「小松菜とサザエのグリーンスープ」が登場。このスープのコンセプトは「苦ミックス」。具材として使用したサザエと小松菜の異質の苦みを合わせることで、甘みを感じることができるのだという。小松菜のシャキシャキとサザエのコリコリという、異なる食感も楽しめる。 こちらに合わせるのは、宮津の老舗・ハクレイ酒造の「白嶺 純米酒」のぬる燗で、提供する温度にもこだわっている。日本酒はぬる燗にすることで甘くなり、コクとうま味もアップする。さらに、日本酒に含まれるコハク酸は貝と同じ成分。うま味同士が高め合う、まさにマリアージュだ。 続いては、渡辺シェフ監修の「丹後甘鯛の鱗揚げ」。甘鯛は一般的な魚に比べてうろこが薄いため、そのまま高温で揚げることでサクサク感が楽しめる。こちらには、ハクレイ酒造の「香田(こうでん)」を冷やで合わせる。 ご飯は、同じく渡辺シェフ監修の「地元のサバ缶を使用したおにぎり」と、名産のへしこを使った「へしこのおにぎり」。シェフの「安くておいしい名物を作りたい」という思いから生まれた「地元のサバ缶を使用したおにぎり」は、文字通り地元で加工されたサバ缶に、トマトピューレやケイパー、塩などで味付けして煮詰めた具材をのせている。サバと濃厚なトマトのうま味が絶妙にマッチした一品だ。 一方、へしこのおにぎりは宿のオリジナル。へしことは丹後・福井地方の郷土食で、サバなどの青魚を糠(ぬか)漬けにして作る保存食。発酵食品ならではのうま味とソフトな食感が特徴で、ご飯が進む一品だ。シェフの開発メニューとご当地ならではのメニュー、両方楽しめるのがうれしい。 「宮津の魚は身の締まりやミネラル分が違う。素材としての力が強い」と、話す渡辺シェフ。奥田シェフも「宮津には食の可能性を感じる」と語る。ここでしか食べられない食材の魅力を、一流のシェフによるメニュー開発と、相性や温度まで計算された地酒のマリアージュで最大限に引き出している。 「宮津・天橋立マリアージュ」は現在、参画事業者を募集中。メニュー提供店は、公式サイトに順次追加される予定だ。 ■漁業の町ならではの定置網を体験 料理に使用した魚介は、どういう環境で育ったのだろうか?それを体験するべく、漁港へやってきた。京都府漁業組合に加盟している養老漁業株式会社では、定置網の操業を実際に体験する定置網体験も受け付けている。※悪天候などで中止の場合もあり 市場のセリにあわせて出港するため、朝は早く、夏季は4時30分、冬期は6時30分出港だ。当日は開始10分前までに、現地で受付を済ませて、現地で貸し出される救命胴衣、長靴、前掛け、手袋、ヘルメットを着用する。船の上では、実際に手で網を引く体験をするため、動きやすく汚れてもいい服装が必須だ。漁場までは約15分。季節や天候によっては、海からの美しい朝焼けが見られる。 漁場に着くと、海面に無数の浮き玉が見える。この下に袋状の網が仕掛けられており、この網に回遊する魚群を誘い込む。網に入った魚は生きたまま水揚げされるため、新鮮な状態を保って市場へと運ばれるのだ。 定置網体験では、手際よく網を上げる漁師と一緒になって、手で網を手繰り上げる。網を上げ始めると、漁のおこぼれを狙うたくさんのカモメが近くを飛び始める。ここでしか見られないフォトジェニックな光景だ。 網には、引き上げるまで何が入っているかわからない。ときにはマンボウのような珍客が網に入っていることも。この日マンボウは海にリリースされたが、大きなものは食用になるそうで、宮城県から千葉県にかけて、また三重県の一部地域などで食べられている。 定置網体験では、約2時間半かけて3つの漁場を巡る。時間だけ見ると少々長いように思うが、美しい景色と物珍しい体験に、体感的にはあっという間だった。 この定置網体験、体験のみの催行人数はなんと1名より。土曜日を除くほぼ毎日開催されているが、参加日の3日前までに申し込みが必要だ。食事付きのプランもあり、実際の漁場を体験したあとに食べる魚類は、また味わい深いものになるだろう。体験の参加者は、水揚げされたばかりの新鮮な魚をそのまま地元価格で購入できる「浜買い体験」をすることもできる。 ■産地ならでは!レアな魚介が味わえる「SUSHIクルーズ」 地元ならではの食体験が楽しめるクルーズもある。2023年からスタートした「SUSHIクルーズ」では、天橋立を舞台とした観光船「KAMOME7(かもめセブン)」の貸切クルーズで、新鮮魚介を使った握りたての寿司が丹後エリアの地酒や地ワインとともに楽しめる。 クルーズでは、船が通るたびに90度旋回する珍しい橋、廻旋橋(かいせんきょう)を通り抜け、宮津湾内を運行する。 こちらで食べられる寿司のネタには、地元ならではのレアなものがたくさん。京鰆(キョウサワラ)は身が柔らかく、口の中に甘みが広がる。鮮度の落ちが早いサワラを刺身で食べられるのは、産地ならではの体験だ。 茨藻海老(イバラモエビ)は、別名ゴジラエビとも呼ばれるゴツゴツしたとげが特徴。その見た目に反し、身はプリプリとして濃厚な高級エビ。「世界のベストレストラン50」で過去5回世界一に輝いた「NOMA(ノーマ)」のオーナーシェフ、レネ・レゼピさんもほれ込んだという、まさに世界に誇れる食材だ。水揚げ量が少ないため、丹後で味わえるのはこの「SUSHIクルーズ」だけなのだとか。 高級魚としておなじみののどぐろ(正式名は赤ムツ)も登場。白身のトロとも呼ばれるほど、上質な脂が特徴で、脂がのりきった秋が旬。さらに、宮津ののどぐろは鮮度感が素晴らしく、そのほとんどがニューヨークやシンガポール、中国など海外へ輸出されてしまうため、こちらも、丹後で味わえるのはこの「SUSHIクルーズ」だけ。 このように、宮津ならではのレアな魚介類が楽しめる「SUSHIクルーズ」。今年の運行は終了したが、好評のため来年以降も開催予定だという。 奇跡の地形とも言われる恵まれた漁場を持ち、伊射奈芸命(いざなぎのみこと)の作った「天と地の架け橋」の神話の地でもあるパワースポット・宮津市。交通や物流が発達した現在においても、その地でしか味わえない名産や体験がある。新しい出会いを求めて、訪れてみてはいかがだろうか。
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