女子マネの甲子園練習参加制止問題は時代錯誤か?
女子選手の公式戦出場に関して安全性が問われ、議論となるのは、まだ理解できるが、練習補助員まで安全性の確保を理由に「男子に限る」としていることは、どうなのか。後原さんの言うように時代錯誤だ。 おそらく高野連には、練習補助員イコール選手という考え方が、根底にあるのだろう。ひょっとすれば、練習補助員を認めることで、なしくずし的に女子選手解禁の流れになることを危惧しているのかもしれない。2008年のセンバツ大会の甲子園練習では、山口の華陵高校の女子部員の甲子園練習への参加が認められずに賛否を呼んだこともあった。しかし、現実問題として、すべてのチームが練習補助員イコール選手というわけではない。地方大会では、女子マネージャーの女子ノッカーも話題になっている。練習補助員まで男子に限るとすることは、ジェンダーにもとづく差別との批判を受けてもおかしくない。 高校野球の根本が教育であるならば、頑張れば夢が叶えられるという仕組みと平等なチャンスを、学校の部活動である野球部に参加している生徒、すべてに与えるべきだろう。 後原さんが指摘するように、練習補助員の女子解禁に際しては、ヘルメット着用など安全性を確保するための細かいガイドラインを作れば、問題はないのではないか。地方大会では、助監督として登録すれば女子選手のベンチ入りが認められているが、練習補助員に関しての手引書を改定すれば、試合出場の認められてない女子選手も、まずは甲子園練習では、憧れの聖地のグラウンドに立てることになる。 ただ、今回の女子マネ退場問題を契機に、論点をしっかりと整理した上で、女子選手の公式戦参加、試合出場そのものへの是非の議論につなげていくことは必要だろう。SNS批判には、女子選手の参加を認めない高野連の構造、体質を問題視するものが多く含まれている。 スポーツ機構のガバナンスなどに詳しいスポーツ総合研究所の広瀬一郎氏は、「当事者の問題。やれ高野連が悪いだの、ルールが古いだの、居酒屋のような議論には参加したくないし、関係ない人間がとやかく言う問題ではないだろう。 本当に時代にそぐわず、女子選手の大会参加が認められないことに問題であると考えるのであれば、ルールを変えればいいだけの話。そう考える関係者が集団提訴をするなど、ルールを変えるための手段、働きかけは、いくらでもある。そもそも高野連が抱えている問題は、構造的な問題であって、こういう話をワイワイ議論して、それで終わりになるようならば何も変わらないし意味がない」という意見。 過去には、女子選手の実態アンケートなどをとった上で、大会参加の要望を高野連に求める具体的な動きなども地方からあったが、広瀬氏が指摘するようにSNS上の“ワイワイガヤガヤ”だけで終わらせないためには、今、何をすべきかを考える必要がある。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)