全国で増えるパーカー制服 ジェンダーや利き手にも対応 いまや個性を表現する手段に 中高生の制服事情
制服を見れば、どこの学校か分かる。学校の象徴であり、統一感が大事とされてきた制服が今、大きく変化している。多様化する社会に合わせつつ、個性も出したい。生徒たちの声が大きく反映されているという。 全国的に導入が広がるパーカー制服
閉校前に制服を考える
宮城県大河原町にある大河原商業高校。2025年3月に閉校するが、最後の年度に102年の歴史の中で初めての取り組みが行われた。それは「私服」での登校だ。私服を着て登校する機会を作り、制服の在り方を考えてみようと企画したという。 校内には「はにわルックをやめよう」という張り紙があった。女子生徒がスカートの下にジャージを履く姿が埴輪(はにわ)に似ているため、はにわルックと呼ばれているという。理由は寒さからだが、これも制服の着崩しのひとつ。閉校が近いからこそ制服を正しく着こなしてほしい。私服登校にはそんな願いも込められていた。取り組みの中で、実際に私服で登校した生徒は2割。「私服は個性も出るし、将来のためにもなる」と肯定的な声が多かった一方、服選びに迷わず毎日着られる制服の良さに改めて気づいたと話す生徒もいた。
学校の象徴から多様化へ
学校ごとに指定され、学校の個性と価値観を表してきた制服。長く制服の流行を見てきた百貨店の学生服売り場の担当者はここ数年、機能性やジェンダーなどを重視する学校が増えてきたと話す。 学生服の製造販売大手「カンコー」によると、毎年約300校で学生服のモデルチェンジが行われてきたが、2022年以降は一気に増え、2023年は800校を超えた。その背景にあるのが、多様性への配慮だ。男子女子を問わずに着られるデザインや、ブレザーでスカートとスラックスのどちらかを選択できるようにするなど、生徒の性自認を尊重した制服が増えているという。また、利き手にも配慮し、左利きの生徒でも着やすいよう、ボタンの前合わせを右にも左にも変更できるブレザーも誕生。お下がりを兄弟姉妹が着る場合でも合わせを気にしなくていい男女兼用ブレザーにもなっているという。