<北朝鮮>危険すぎる「速度戦」アパート工事を分析(1)「水準は日本の90年前。耐久性は10~15年か」と専門家 高層なのに資材の圧倒的不足、動力源はゼロ…
◆ひび割れや剥落が憂慮
――脱型が早いと、どのようなことが起こりえますか? 今本:建物の耐久性に深刻な問題を引き起こします。専門的な話になりますが、コンクリートはアルカリ性です。鉄筋は大気中では錆びますが、アルカリ性の中にあれば錆びません。ただし、コンクリートのアルカリは大気中の二酸化炭素(弱酸性)と反応して中性になり、これが鉄筋位置にまで及ぶと鉄筋は錆びるとされています。だからこそ鉄筋コンクリート造は、コンクリートの強度が強く、緻密なほど、この反応が進みにくく耐久的な構造だといえます。 しかし、脱型が早まると、当然コンクリートの組織が十分緻密化しにくくなり、空気中の二酸化炭素や水分が鉄筋に到達するスピードが速まります。つまりコンクリートの寿命…ひび割れや剥落などが早くなります
◆機械による動力ゼロ、すべて人力でカバー
――とにかく人の多さが目立ちます。 今本:(機械などを動かす)動力源がないようです。通常、工事現場では、コンクリートを作るミキサー、それを打ち込むポンプ車、締固めを行う振動機などが使われます。これらの機械を動かすためには、電気や燃料などの動力源が必要です。 しかし写真を見る限り、そうした動力源は見当たらず、機械があれば最小の人数で済むところを人力でカバーしているようです。だからこれほど人が多いのでしょう。施工現場において重要な動力源を回す余裕がないのかもしれません。
◆あまりにも少ない鉄筋…明らかな資材不足
――北朝鮮では、資材不足も深刻です。 今本:資材不足は、様々な場面で見て取れます。最初に指摘した型枠もそうですが、足場や(重さを支える)支保工などの仮設資材が全て木です。鋼(はがね)が一切使われていません。 木材が豊富なアジアでは、竹などを仮設資材に使うことは多いですが、それでもコンクリートの重量を支えるべき部分やしっかりと固定すべき部分など、要所では鉄などを使用します。 ――建物に使われる鉄筋の量はどうでしょうか? 今本:鉄筋の量も非常に少ないです。建物の安全性を図る指標のひとつに「構造安全性」があります。これは、地震などの外部の力に対して耐えうるかを測る指標で、コンクリートの強度と鉄筋の量によって決まります。 柱に縦に通る鉄筋を「主筋」(②赤枠)と言いますが、写真で見ると、最低限の4本しかありません。日本では一般的に12~20本は使います。 この主筋を帯状に巻いている部分を「せん断補強筋」と言います。間隔を密にするほど耐震性が高まります。地震国の日本では、15センチ以下の間隔で巻くことが求められています。しかしここでは、横にいる作業員のヘルメットの大きさから推測すると約30センチの間隔でしょう。
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