優れたリーダーは、メンバーにやりがいを感じさせることができる
■日々の仕事にやりがいを見出すことは難しい 社内での地位の高さや低さに関係なく、働き手は、自分が日々行っている仕事が重要なものだと思いたい。しかし、仕事にやりがいを見出すことは途方もなく難しいのが現実だ。どのような仕事も、楽しい時もあれば、退屈な時もある。輝かしい成功に酔いしれる日がある一方で、無味乾燥な経費報告書類の作成で気が滅入る日もあるのだ。実際には、単調で退屈な仕事に追われる日が多く、精神が高揚するような日は少ない。 リーダーとしては、チームのメンバーが退屈な日々をまったく経験せずに済むようにすることは不可能だ。時には、退屈な仕事をすべて完了させるように監督することがマネジャーの仕事である。 それでも、リーダーは、誰もが仕事に何らかのやりがいを見出せるようにする手助けができる。単に給料のためだけではなく、より大きな目的のために働きたいと思うのは、人間として当然の心理だ。その点、優れたリーダーは、メンバーが行う仕事と、大きな目的を結びつけることに長けている。それによりリーダーが手にするごほうびは、メンバーのやる気が高まり、より結束し、その結果としてパフォーマンスが向上することだ。 すべての出発点は、メンバー各々が、自分が大きなミッションの追求に参加していると感じられるような文化を築くことである。 筆者は2010年に米国政府の国際開発庁(USAID)の長官に就任して2週間も経たないうちに、中米のハイチで22万人の命を奪った巨大地震への米国政府の対応を取り仕切ることになった。地震が発生した数時間後には、筆者らのチームは米国政府内の膨大な数の活動をマネジメントし始めた。ワシントンDCからハイチの首都ポルトープランスまで、何十もの米国政府機関と何千人もの政府職員が活動に加わった。そのうち、筆者がそれまでに一緒に働いた経験がある人物は一人だけだった。この不眠不休の活動を通して、筆者は信頼構築の方法を言わば速成コースで学ぶことになった。 震災対応の舵取り役になった数日後、筆者はホワイトハウスでの会議を終えて、USAIDのオペレーションセンターに戻った。その時点ですでに、そこは大勢の公務員であふれ返っていた。その一人ひとりが所属機関のロゴの入った帽子とポロシャツを身につけていたのをよく覚えている。 USAIDには、米軍を含むさまざまな政府機関の職員が集まってきていた。大勢の人が一時的に派遣されてきていたことにより、実にさまざまな問題が生まれた。ありきたりな問題(たとえば、個々の連邦機関によってメールシステムの仕組みが違う場合があった)もあれば、より根本的な理念に関わる問題もあった。出身機関が違えば、物の考え方や物事のやり方も違ったのである。 USAIDが入っているワシントンDCのロナルド・レーガン・ビルのロビーを歩いていた時、筆者はある「障害物」にぶつかった。それは文字通りの意味で通行を妨げていた。入室者のセキュリティ検査を行っている場所で、大勢の人が行列をつくって待っていたのだ。どうしたのかと尋ねると、このような返事が戻ってきた。USAIDの職員は自由に出入りできるけれど、ほかの政府機関から派遣されている職員は、オフィスに入るたびに、一時的な入室許可を取らなくてはならないのだ、と。 問題は、これにより、チームのメンバーが一緒に仕事をするペースが減速していたことだけではない。この状況は、誤ったメッセージを発してもいた。セキュリティ検査における待遇の違いは、一部の人だけが身内で、それ以外の人は部外者だというメッセージになっていたのだ。筆者はセキュリティチームと話し合い、さまざまな選択肢を検討した。その結果、差し当たりの間は入室ゲートを開放することになった。 この決定は、大地震という途方もない危機の中ではそれほど大きなものに思えないかもしれないが、実際、官僚主義的な障害を取り除き、メンバーの時間の無駄を取り除いたことに加えて、メンバー間の信頼構築を後押しすることにより、オペレーションを前に進める効果を持った。 チームで活動することにより、時として目を見張る成果を挙げることができる。しかし、すべてのメンバーがチームの一員だと感じ、その活動を通じて活力を感じられない限り、チームはその潜在能力を存分に発揮できない。チーム内に身内とよそ者がいるようではどうしても、自分が過小評価されていて、のけ者にされていると感じる人が出てくる。そのような人たちは、自分の行っている仕事が大きな価値を持っていないように感じずにいられないのだ。 まずは適切なマネジャーを採用し、昇進させることが重要であることは、言うまでもない。しかし、時にはそれだけでは十分でない。その人たちのやっていることが大きな目的を成し遂げるうえで重要な意味を持っているのだと、示す必要があるケースもある。 このようなことを、別の方法で実行しているリーダーもいる。