ステーキにケーキ、高脂質食品が太りやすいことは経験的にも学術的にも分かっているけれど…筋肉先生・谷本道哉が教える<食べていい脂質><よくない脂質>
◆高脂質食品はわかりやすく太りやすい 脂肪ののった肉汁あふれるステーキ、生クリームたっぷりのケーキなど、脂質の多い食べ物は「太る」というイメージが強いと思います。実際に高脂質食品が太りやすいことは、経験的にも学術的にも分かっています。 動物実験で肥満モデルを作成するときは高脂質食を与える方法が標準とされているくらいです。研究者として断言できますが、それはもう、期待どおりに太ってくれます。 脂質も重要な栄養素。確かに必要ですが、摂りすぎは肥満を誘発します。そして肥満はさまざまな病気のリスクを増加させます。 高脂質食が肥満を誘発する原因として、前述のとおり同じボリュームを食べたときのカロリーが数倍も高いことが挙げられます。しかし、脂質が肥満を誘発する理由は実は高カロリーだから、だけではないのです。 摂取カロリーが同じでも、高脂質の餌を食べたラットでは、体重が変わらないままで体脂肪率だけが大きく増加したという報告があります。カロリーが高くなくても高脂質食は体脂肪を増やすのです。 高脂質食には体脂肪の分解を抑制する作用、ミトコンドリアでの脂質の燃焼反応を低下させる作用のあることが分かっています。高脂質食は「体脂肪をエネルギーとして使いにくくする」ので脂肪がつきやすくなるのです。 また、高脂質食は、食欲を抑えるレプチンというホルモンの分泌を減らしてしまいます。レプチンに対する感受性も低下させます。つまり、高脂質食品を摂っていると、レプチンが働かないため食欲の抑制がきかず「食べすぎてしまいやすい」という要素まであるのです。
◆肥満対策で重要な意味を持つ「肉よりも魚」 とはいえ、ひとことで脂質といっても、それに含まれる「脂肪酸」の種類によって肥満や健康効果には違いがあります。ここで脂肪酸について簡単に説明しておきましょう。 食事に含まれる脂質の大半は中性脂肪(トリグリセリド:TG)です。そして中性脂肪の大半は脂肪酸で構成されますので、食事の脂質は大半が脂肪酸ということになります。 脂肪酸は、炭素の二重結合のない飽和脂肪酸と、二重結合が一つだけある一価不飽和脂肪酸、二つ以上ある多価不飽和脂肪酸の三つに大別できます。 肉類や乳製品に多い飽和脂肪酸の摂取では、魚油などに多く含まれる多価不飽和脂肪酸(DHA、EPAなど)と比べて脂質がエネルギーとして使われにくく、体脂肪の蓄積量が大きくなることが報告されています。 ですので体脂肪が気になる方は、飽和脂肪酸の多い肉類や乳製品を摂りすぎないようにすべき、ということになります。「肉より魚」は、主には動脈硬化対策などの健康面からいわれる言葉ですが、肥満対策にも重要な意味を持つのです。