金メダリスト、村田がデビュー戦に向けプロ仕様に変身
プレッシャーとパワーで圧倒
プロ転向の決断後、ここまでの練習をずっと見守ってきた帝拳の本田明彦会長は「ずいぶん変わったでしょう?」と笑った。 「これまでは、アマチュアスタイルでガチガチにガードを固めて手が動かない。フックもボディもプロのスタイルのパンチが打てなかった。右ストレートにしても、これから上を目指すには、今のうちに修正しておかねばならない打ち方だった。スパーも4ラウンド以上やったことがないと言うんだから。でも、器用で吸収力があるから教えたら、それをすぐに自分のものにする。これでも、対柴田用にいろんなものを省いている段階。プレッシャーとパワーだけで勝てるでしょう。私が見てきて、こんなパワーを持った右ストレートを打つボクサーは過去に一人もいないから」 日本屈指のチャンピオンメーカーが、ここまで言うのは珍しい。 デビュー戦に東洋の現役チャンピオンを当てるというのは、前代未聞のマッチメイクである。「僕もその話をふられたときにはビックリしました」と村田も言っていた。裏を返せば、そこに金メダリストを預かった帝拳サイドの失敗できないというプライドとプレッシャーが見え隠れてしている。名前も知らない噛ませ犬を連れてきてデビュー戦をやることは簡単だろう。だが、帝拳サイドは、村田のポテンシャルを信じるがゆえにリスクを承知であえて未来へ続くマッチメイクを組んだのである。 村田は、この日、スパーリングの後、ミット打ち、ロープ、シャドー、腹筋運動と、ずいぶんと汗をかいた。 「アメリカ合宿では、あらゆるパターンに対応できるように練習してきた。アウトボクシングでもファイターでも。考え過ぎても失敗するから、当日、相手のスタイルに合わせて対応したい。自信ができた。柴田さんは“うまい”という印象。パンチをもらわず自分の距離で戦いたいと思っている」 時差ボケと疲労はピークのはずなのに村田は爽やかにふるまった。 会見では、礼儀正しく語ったが、彼の本音はわかっている。 「倒したるでえ」である。 飯田覚士氏にも、勝敗予想を聞いた。 「今日の村田君の練習を見て、少し、これまで考えていた勝敗予想が変わりました。これまでは6ラウンドなら柴田君が足とスピードでさばききるのではないかと考えていたのですが、4回以降でのKO決着となるんじゃないでしょうか」 注目のデビュー戦まで、あと11日……。 (文責・本郷陽一/論スポ)