上野千鶴子が伝授「なぜ産まないのか」という"不産ハラスメント"への秀逸な切り返し3パターン
■「なぜ産まない?」という不産ハラスメントへの切り返し 彼女の言葉からもわかるように、産んだ女性たちの自己肯定感というのはかなり大きいようです。「子を産んで初めて人生の何たるかがわかった」と話す女性もいますからね。確かに人生においてはとても大きな経験でしょう。しかし不可欠な経験ではない。私はそう思っています。 昔、インドに行ったときには、私に子どもがいないと知った現地の男性たちから「それは罪だ」と言われました。神に背く罪ということだったようです。日本にも近い考え方の人はいて、私も特に男性から「産まないなんておかしい」といったことを、いくどとなく言われました。そこで、色々な返し方を考えましてね。 「大学まで行ったんですけど、子どものつくり方は教えてくれなくて」 「いたんですけど……亡くしたんです」 「じゃあ、あなたが育ててくれます?」 これで、たいていの人には「ズカズカ人のプライバシーに踏み込むなよ」というメッセージが伝わります。同じような思いをしている女性は、返し方を何パターンか用意しておくと、かえってそれを繰り出すのが楽しみになります。相手はこっちの人生を本気で考えて言っているわけじゃないですから、傷つくだけ損です。 ■産んだ人たちの多くは自分の意思ではなく外圧を受けている 私の両親は昔ながらの価値観を持った保守的な人たちでしたから、産まないことに関してもずいぶん言われました。なぜ産んでほしいのかと母にたずねたときは、「あなたの老後が心配だから」と言われてびっくりしたものです。あなたは自分の老後のために私を産んだのかと。 でも、幸か不幸か、人間にはバイオロジカル・クロック(生物時計=妊娠可能な年齢の限度)がありますから、さすがに40歳を過ぎたら誰も何も言わなくなりました。本当によかったです(笑)。 人はなぜ産むのでしょうか。私はなぜ産まないのかとあまりに聞かれたもので、逆になぜ産むのかにすごく興味が湧いて、産んだ女性たちに「何で産んだの」と聞いてまわったことがあります。 そうしたら、主体的な動機を口にした人はほとんどいませんでした。姑に頼まれた、夫に土下座された、産むのが当たり前だと思った──。つまり外圧と因襲ですね。