アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第33回 フルーツ
MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第33回は突起物の解析結果から更なる謎が! ■ピンキー☆キャッチ 第33回 フルーツ 【写真を見る】芸能界の裏側も知ることができる!?アルコ&ピース平子祐希が小説家デビュー! 「鈴香です」 「七海です」 「理乃です」 「私達三人合わせて『ピンキー☆キャッチ』です!」 十七歳の私達、実は誰も知らない、知られちゃいけないヒミツがあるの。それはね、、表向きは歌って踊れるアイドルグループ。 でも悪い奴らが現れたら、正義を守るアイドル戦隊『スター☆ピンキー』に大変身! この星を征服しようと現れる、悪い宇宙人をみ~んなやっつけちゃうんだから! マネージャーの都築さんは私達の頼れる長官! 今日も地球の平和を守る為、ピンキー☆クラッシュ! 都築は指おり数えた。あの日からもう5日が経っていた。 世間はいまだに九条翔太とKAHOの電撃婚の衝撃から抜け出せずにいる。SNSでは『ロス』というワードが世界規模でトレンドに入り、『KAHOのこの歌詞は九条の事を指しているのでは』などの考察も止まる事を知らなかった。 その間、防衛省の方でも動きがあった。周辺の突起物はほんの少しずつ大きくなり、縦4メートル、横3メートルほどに膨れ上がっている。周辺道路の封鎖や近隣住民への避難勧告を促したので流石にニュースでも取り上げられたが、水道管の不具合という発表はいまだ広く信じられていた。ほんのごく一部『世界終末の始まりだ』とネットで騒いでいる者達がおり、関係者達をドキリとさせたが、そうした声も結婚報道に飲み込まれていた。 都築がデスクで報告書を書き終えると、遠山が駆け寄ってきた。 「都築さん、吉崎さんがお呼びです。例の突起物の解析結果が出たようです」 「おお、そうか。じゃあ行こう」 二人は連れ立って研究部署内にある一室に赴いた。古めかしいソファには今回の分析担当者と吉崎が座り、ファイリングされた複数の資料を見比べていた。 「おお都築。ちょっと気になる結果が出たんだ」 「はい、どういったものでしょう?」 「分析チームの成宮です、ご説明させて頂きます。全六箇所で発見された突起物ですが、更に膨張が認められて直接的な接触は危険と判断されました。そこで内部の非破壊検査を実施しました。こちらがX線を用いた画像です」 「んん・・この白い影は何でしょうか?」 突起物を真横から撮った解析写真だったが、突起の内側に白い物体が写っていた。 「はい。おそらく薄い膜のような物かと思われます。思うにアスファルトが隆起した原因は、この内側の何かが膨張した影響でしょう」 「その膜の中の中身は何だったのですか?」 「それが、写らないんです。もちろん通常であればこの程度のサイズのものは撮影可能なものです。しかし透過撮影が出来ないんです。もちろん他にも様々な方法で試してはいますがどうしても無理でした」 「中身が分からないようにしていると・・」 「はい。分析班として予測でものを言うのははばかられるのですが、何者かがこの中身を隠したいという意思のもと、透過が難解な物質を用いているような気がするんです」 「確かに・・」 吉崎が前のめりで都築に顔を近付けた。 「前に話したのを覚えているか?奴らは我々の・・この国の防衛力を怪人を利用して測っていた。そしてそこから弾き出された計算の元、今回の謎のプロジェクトに移行した。まああくまで仮定ではあるが」 「はい覚えています」 「こちらの防衛手段、そしてその強度を知った上での計画だとすれば、これは非常に危険だ。我々の防衛能力を、奴らの攻撃力が上回っていると判断したことになる」 「確かに。しかしピンキーとの戦闘のみで全てを測る事は出来ないのでは?こちらには自衛隊や、それに伴う様々な防衛機器もある訳ですし、それらは対怪人には用いていません」 「用いていないんじゃない。用いる事が出来ないんだ」 「・・・・・と、言いますと?」 「奴らは核を持たないこの国をターゲーットに選んだ。更には東京都内にランダムに出没し、目的不明に暴れ回った。つまり、この住宅の密集した都心での戦闘が起こった際、そうしたケースでの我々の戦闘方法とその限界を測っていたのではないかな」 「・・・・・あっ!」 「核はもちろんの事、銃器の使用すらままならない我々の防衛手段のデータを取り終え、次の攻撃フェーズに移った。見てみろ、結果的にこの都心では危険性の高い謎の突起に触れることもできず、中身をうかがい知る事も出来ていない」 「都心ではこちらが大掛かりな攻撃が出来ない事を、奴らに悟られてしまったと・・・?」 「その通りだ。あいつらからするとピンキーの攻撃程度が関の山、ならば勝機ありと考えた。ずっと現場を取り仕切ってきた君には申し訳ない言い方になるが、宇宙からの侵略者の攻撃力に対し、3人の少女の防衛力が勝るとは考えずらい」 「それは・・そうですね」 「失礼、こちらもご覧頂きたいのですが・・」 成宮が一枚の用紙を見せてきた。 「これはまだ未確定のデータですのでこれから更に分析を進めていくのですが・・。突起物から危険なガスの類が漏れ出ていないかの気体検査を行ったのです。すると微量ですが気になる成分が検出されまして」 「気になる成分?」 吉崎は用紙を手にしてみたが、グラフや不規則に見える数字ばかりで理解は難しかった。 「はい。その・・果物かと思われる気体成分が、本当に微量に検出されたんです」 「果物? フルーツ?」 「ええ。それがはたして本当に果物なのか、そして何の果物かまではまだ分析を進めないと特定は難しいのですが」 その時、その部屋にいる者全員の携帯が緊急音を発した。画面には『第四隆起物に侵入者確認。』と出ている。都築が代表して連絡を入れると、防衛省職員に扮した2人の外部の男性がテントに侵入し、確保されたとの報告を受けた。都築達は引き続き分析の報告を待つ旨を伝えると、侵入者が確保されている特別留置室へと急いだ。 「果物・・。突起物・・。侵入者・・。一体何が起きているんだ・・・・」 混乱する頭を振り切るように、都築は階段を駆け上った (つづく) 文/平子祐希