大企業ではなく、中小企業の賃上げを促す政策が必要 1月の消費者物価指数、上昇が低水準に
労働者が流動化して、企業に賃上げを促す政策を行うべき
飯田)日本は世界的にも勤続年数が長く、昔から雇用をもう少し柔軟にしようと言われていますが、なかなか進んでいません。デフレの影響もあるのですか? 山川)基本的には、企業側に政治が向いているのですよね。だから企業が困るようなことは、できるだけ政策として出したくない。賃金を手っ取り早く上げるには転職する人に対して補助金を出し、雇用の流動化を促す政策を立てることですが、いちばん困るのは中小企業なので難しいわけです。しかし、残念ながら日本の場合、新陳代謝をもっと上げないと、高い賃金を払えない企業が残り続けている状態です。もっと労働者が流動化し、企業への賃上げ圧力が強まるような政策を行った方がいいと思います。
減収増益を3期も続けている企業はその後続かない
飯田)「コストカット至上主義」のような時代が続き、「賃金を上げるなどもってのほか」という感じですよね。 山川)経営側にとって都合のいい時代が続いたのですよ。以前、『日経ビジネス』の編集長を務めていましたが、その際「利益よりも売り上げ」という特集を組んだのです。すごく反響がありましたが、日本の場合、どちらかと言うと「減収増益決算」を何年も続けているような企業が少なくありませんでした。それで株価を上げ、幹部が高い報酬をもらっているような状況でしたが、調べてみると減収増益を3期も続けている企業は、そのあとだいたい成長していないのです。コストカットと人件費の圧縮で利益を捻出するような方法は長続きしない。それを続けてきたのが、「失われた20~30年」の遠因の1つになっていると思います。 飯田)取締役の任期は1期2年だから、減収しても「とりあえず増益で利益を出しておけば俺の立場はいい」となってしまう。 山川)おっしゃる通りです。それで自分は逃げ切りを図るけれど、そのあとが続かないという結果がよくありますね。