大企業ではなく、中小企業の賃上げを促す政策が必要 1月の消費者物価指数、上昇が低水準に
賃上げした企業には補助金を付けるというように人為的に行うのではなく、人手不足から賃上げを促すことが正当
山川)1つ指標を紹介すると、世界的に、1つの会社に勤める勤続年数と賃上げ率の関係を見たものがあるのですが、勤続年数の平均が高い日本やイタリアは10年を超えるのです。それに対して、アメリカは4年ぐらい。韓国や北欧諸国も短いのですが、結果として勤続年数が短いほど賃上げ上昇率が高いのです。 飯田)短い方が。 山川)働いている人たちが積極的に労働をシフトし、転職しながら賃金を上げていくためです。企業からすると、次々に退社されては困るから、引き止めるために賃上げを行う。やはり人手不足から賃上げは起こるのです。いま日本政府は、賃上げした企業には補助金を付ける、または税額控除などを行う制度がありますが、人為的なものよりは、人手不足で賃上げを促す方が正当だと思います。
大企業ではなく、中小企業における賃上げが重要
飯田)今回の春闘で「賃上げ率4%」というような話がありますが、自律的に回るには、まだ時間が掛かるのでしょうか? 山川)基本的には中小企業がいちばん重要です。労働組合の組織率から見ると、中小企業の方は100人に1人も組合に入っていません。いま連合が賃上げ率についていろいろと言っていますが、それは一部の大企業に限った賃上げ率を言っているわけです。中小にどこまで浸透するかはまた別の話です。 飯田)賃上げが。 山川)綱渡りの状態で、かろうじて物価は2%程度に保っているけれど、マイナス金利解除はともかく、本当にその先の金融引き締めまで向かうのか。日本経済の足腰がそれほど強いようには見えないですね。
価格転嫁率は変わっていない
飯田)私はまだ電車が動いていない時間にタクシーで出勤するのですが、タクシーのビジョン広告にも中小企業の経営者向けに、政府が取引価格の上昇を促している内容が出ていました。 山川)やれることはやっていますが、データだけを見ると、価格転嫁率などは去年(2023年)から今年にかけて変わっていません。
取引先の大企業に「価格を引き上げる」とは言えないのが実態
山川)個別に中小企業の方と話すと、「自分たちの取引先の大企業に対して、そう簡単に価格を引き上げるとは言えない」と言っていました。そういう実態があるのでしょうね。 飯田)上乗せした請求書を出そうものなら、切られてしまうかも知れない。 山川)むしろ率先して値下げを始めているところもありますからね。 飯田)でも、そうなるとデフレに逆戻りしてしまう。 山川)本当に特徴のある商品、強い商品を出している企業には「できるだけ価格を維持してもらいたい」というのが我々の本音ですが、それぞれの企業からすると、合理性で行っているのでしょうね。