東証1部「バブル超え」 相場の上昇基調は続くのか
2015年5月22日に東証1部の上場企業の時価総額(株価に発行済み株式数を掛けたもの)が591兆3007億円(政府保有株除く)に達し、バブル期(1989年12月)の590兆9087億円を上回りました。これにより現在の日本の株式市場がバブル期並みに戻ったとは、一概には言えません。これは、上場銘柄数がバブル期当時の1165社から現在の1883社へと約6割増えたことなどが押し上げ要因となっていたためです。 株価の物差しのひとつ株価収益率(PER)でみても、平均PERは1989年12月が60倍を超えていましたが、現在は17倍であり、これは現在の欧米の株式市場と同水準であり、過熱感があるわけではありません。また、日本のGDPなど経済指標と比較しても、株価だけが突出して上昇しているわけではありません。日本株についてはあくまで一時期の低迷を脱しつつあるとの見方もできるでしょう。 ただし、結果として株式相場が回復し、時価総額がバブル期を抜くという象徴的な出来事が起きたことは確かです。日本では2012年11月のアベノミクスの登場で、為替や株式市場を取り巻く環境が一変します。欧州の信用危機により過剰なまでに買われていた円相場でしたが、アベノミクスの登場で海外のヘッジファンドなどが大規模な円売りを仕掛けました。これにより急激な円安が生じ、同時に日本の株価も海外の投資家の買いを主体に大きく上昇しました。 持ち合い株の解消や連結決算・時価会計といった制度の変更も、海外投資家の日本株のシェアを高める要因となりました。1989年末までのバブル期が国内投資家によるものであったのに対し、アベノミクス後の株価の上昇の主役は当初、海外投資家であったことに大きな違いがありました。1989年12月の外国人の売買シェアは約8%でしたが、2015年5月は68%程度と大きく上昇しています。 世界的な金融経済危機が後退してきたタイミングで、日銀の大胆な緩和策も含めたアベノミクスの登場により日本株は持ち直してきました。日経平均はアベノミクスが登場した2012年11月の9000円近辺から見れば倍以上の値上がりとなりましたが、この株高は人為的に持ち上げられていた面も忘れてはいけません。