ブタから人への臓器移植が実用化へ新段階、臓器不足解消の切り札となるか 最前線の米国で日本人医師が一翼を担う【ワシントン報告(11)異種移植の最前線】
米国では約10万人が臓器移植を必要とし、大半を腎臓が占める。日本と同様、供給は不足している。遺伝子改変したブタの移植に関し、日本はまだ研究グループによる指針案づくりが始まった段階に過ぎない。 ▽慎重さと決断で揺れる 2009年、ハーバード大のマサチューセッツ総合病院で研究していた山田氏に取材した際、「臨床応用は5~7年を目標にしたい」と語っていた。残念ながらその目標は実現せず、代わりに別のチームの先行例が華々しく報じられている。慎重さと決断の間で揺れる思いが見て取れた。 米国の恵まれた研究環境は「日本と比較にならない」(米国立機関に留学中の日本人医師ら)半面、競争は厳しい。山田氏のチームの優位性は高い安全性を担保するドナーと移植患者のスクリーニング法にある。条件が整った事例で例外的に好成績を残したとしても臨床応用は視野に入らない。安定した結果が求められる。 脳死ではない人への腎移植はいつ踏み切れるのか。山田氏は「2年以内、早くて1年以内もあり得る」と答えた。