「愚痴はいらない」長谷部誠が現役22年間、心を整えられた理由
2024年3月、現役引退を決断した長谷部誠。2011年に発刊され、ベストセラーになった自著『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』の一部を抜粋・再編集してお届けする。第2回。 【写真】「お酒は楽しむもので仕事の愚痴を言うためのガソリンじゃない」長谷部誠が厳守した飲酒ルールとは
マイナス発言は自分を後退させる
サッカーというのは、いろいろな要素や人間が複雑に絡み合っているため、ミスを人のせいにしやすいスポーツなのだと思う。 チームメイトに走らなかったやつがいたから負けたとか、あいつがドリブルで抜かれたから失点したとか、いくらでも責任を押しつけることができてしまう。 特に監督のせいにするのは簡単だ。 「監督は自分のことを分かっていない」 などと言うのは、試合に出られない選手の定番の愚痴だ。僕は愚痴を言わないようにしている。愚痴というのは一時的な感情のはけ口になって、ストレス解消になるのかもしれないけれど、あまりにも安易な解決策だ。何も生み出さないし、まわりで聞いている人の気分も良くない。 愚痴で憂さ晴らしをするのは自分の問題点と向き合うことから逃げるのと同じ。ゆえに、逆に愚痴を言わないように心がければ、自ずと問題点と向き合えるようにもなるのだ。 ヴォルフスブルクの3シーズン目、指揮官がフェリックス・マガト監督からアルミン・フェー監督に交代した。当然ながら、僕は一からポジション争いをすることになる。ライバルとなるのは新加入のアルジェリア代表のジアニと、デンマーク代表のカーレンベリ。そこで僕はケガで開幕から約1ヵ月間出場することができず、出遅れてしまう。 当時、ひとつ間違いなく言えたのはフェー監督は僕のプレーをあまり信用していなかった、ということだ。でなければ、僕と同じポジションに2人も選手を補強しなかったと思う。実際、ドイツの新聞や雑誌の予想スタメンでは、彼らの名前が書かれることが多かった。 けれど、それを誰かに言ったとしても現状は改善されない。逆に自分に何か問題があるのかもしれないのに、そこから目を背けることにつながる。だから僕は監督があまり僕を評価していないという現実を受け止め、まずそこを自分のスタートラインにした。では監督は何をMFに求めていて、どんなプレーをすれば信頼してもらえるようになるのか、試合を観ながら考え続けた。