「1万円札肖像は消えても諭吉は永遠に不滅です」アートから城模型まで故郷・大分県中津市が取り組む熱きプロジェクト
■地元の子どもたちが学ぶきっかけに■
「お札の顔」を引退しても、諭吉さんの功績は永遠に不滅です-。1万円札の肖像が7月に福沢諭吉(1835~1901)から渋沢栄一に交代するのを前に、福沢の故郷・大分県中津市では、「不滅の福澤プロジェクト」と銘打って顕彰する取り組みが進められている。1984年から40年間にわたって肖像を務めた福沢を愛する人たちを訪ねた。 (中村太郎) 【写真】1万円札の裁断くずで作られた中津城のミニチュア 福沢の銅像がそびえるJR中津駅前に3月、現1万円札を絵柄にしたモザイクタイルアートが登場した。高さ2・1メートル、幅4・5メートルに9万4128枚のタイルを敷き詰めた常設作品を展示したのは、商工関係者でつくるNPO法人「中津まちづくり協議会」だ。企画した大下靖彦さん(46)は「地元の子どもたちが福沢諭吉についてもっと学ぶきっかけになれば」と語る。 「不滅プロジェクト」は市が音頭を取って2021年に開始。賛同したまちづくり協議会も、福沢の旧居をデザインしたご当地マンホールを作ったり、福沢の功績を紹介する本を小学校に寄贈したりして後押ししているそうだ。 観光名所の中津城では、古くなり使えなくなった1万円札の裁断くず6億円分を貼り付けた「開運の中津城模型」を運営会社が制作。来場者を驚かせている。市も中津駅に停車する観光列車の乗客に「諭吉のふるさと」をPRし、福沢ゆかりの地を巡るマップを作るなどして盛り上げる。
■カレーを最初に日本へ紹介したのも■
取材を進める中で「日本にカレーを最初に紹介したのも福沢諭吉」との情報が入った。何でも福沢が1860年に出版した英語の単語単文集「増訂華英通語」の中で、「Curry」を「コルリ」と表記したのが始まりだとか。 中津駅から徒歩15分ほどのカレー店は、その名も「諭吉コルリ」。市内の老舗みそ・しょうゆ醸造元の運営会社を営む菊池徹さん(51)が、福沢にちなんで2021年に開いた店で、特製のだしじょうゆとみそを隠し味に使ったこく深い一皿が人気を集めている。 店内の壁には「オリジナリティーの人・福澤諭吉の本邦初」と書かれたパネルが何枚も張られていた。「体育教育の導入」「著作権の普及」など、あまり知られていない福沢の功績を研究者による文章で紹介している。 小さい頃から福沢と同郷であることに誇りを持っていたという菊池さんは「新紙幣への切り替えで忘れられないように情報発信したい」と意気込む。