室温18度未満で健康寿命が縮む!? 脳卒中や心臓病につながるリスクは子どもや大人にも。家の断熱がマストな理由は省エネだけじゃなかった
・コレステロール値と室温の関係 私たちは高血圧症や循環器疾患という「生活習慣病」は食生活を見直して、適度な運動をし、飲酒や喫煙を抑え、十分休養することで改善できると考えてきました。しかし上記の伊香賀先生たちの調査によって、そういった日頃の摂生だけではなく、暮らしの環境を整えるだけでもこうした病気のリスクを減らすことができるというわけです。伊香賀先生が「生活習慣病は生活環境病でもある」と唱える意味がわかると思います。
・高血圧・循環器疾患は生活環境病でもある
日本で断熱意識が欠落していた理由とは?
実は以前から欧米では、健康に対する住宅の重要性を説いていた、と伊香賀先生は言います。だからこそ先述の通りWHOの勧告があり、イギリスや、歴史的にイギリスと関係の深いニュージーランドで住宅に対する施策が行われたのです。 では、なぜ日本ではこれまで、欧米のような住宅の高断熱化に関心が集まらなかったのでしょうか。 その理由は、今から約700年前の1330年代に書かれた『徒然草』にもあるように、日本の住宅は昔から、夏の気温や湿度を重視して建てられてきたからです。徒然草には「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる」とあります。少なくとも700年も前から日本人は「家は夏の暑さに対してなんとかすれば、冬はなんとでもなる」という考えが“当たり前”だったと考えられます。
一方イギリスでは、19世紀にナイチンゲールが活躍していました。彼女は「どうすれば病気に罹らないか」「どうすれば病気から快復させることができるか」といったことをまとめた『看護覚え書』を1860年に刊行します。同書は全13章で構成されているのですが、その第一章は「換気と暖房」。冒頭からもう、温かい環境について言及しています。しかも13章中、実に半分以上の7章が生活環境、つまり住宅にも関係することです。イギリスで国民の健康政策に住宅が含まれるのは、この『看護覚え書』の考えが影響しているのは想像に難くありません。 ・ナイチンゲールの看護覚え書 第一章以外にも「きれいな空気や水」「物音」「よい環境の変化」「陽光」など、暮らしの環境について言及されていますが、それらを押さえて最初にナイチンゲールが伝えたかったのが「換気と暖房」だと言えるのではないでしょうか。 ですから冒頭で触れたように、日本でもしナイチンゲールが活躍していたら、日本の住宅は断熱性能が高くなり、それによって生活習慣病が今よりも抑えられていたかもしれない、というわけです。
【関連記事】
- 賃貸住宅、省エネ性能が高いと”住み続けたい・家賃アップ許容”ともに7割超! 大家などの理解進まず供給増えない課題も 横浜市調査
- 世界基準の超省エネ住宅「パッシブハウス」を30軒以上手掛けた建築家の自邸がスゴすぎる! ZEH超え・太陽光や熱エネルギー活用も技アリ
- 厳しすぎる世界基準の環境性能に挑む賃貸住宅「鈴森Village」。省エネは大前提、植栽は在来種、トレーサビリティの徹底など…住みごこちを聞いてみた 埼玉県和光市
- ZEH水準を上回る省エネ住宅をDIY!? 断熱等級6で、冷暖房エネルギーも大幅削減!
- 世界基準の“超省エネ住宅”パッシブハウスの高気密・高断熱がすごい! 190平米の平屋で空調はエアコン1台のみ