“サブスク乱立”に“放映権料高騰”も…「スカパー!」運営会社が最高益 意外過ぎる「稼ぎ頭」とは
「ネトフリ」やら「アマプラ」やら、世は“サブスク乱立時代”である。有料放送で知られる「スカパー!」もそのあおりを受ける一つのはずだが、実は運営元のスカパーJSATホールディングスは、直近の決算で最高益を更新するほどの好調ぶりなのだという。そのカラクリを探ってみると、意外な“稼ぎ頭”があるようで……。同社の米倉英一社長に、経済アナリストの森永康平氏が迫った。 ※以下は「週刊新潮」2024年12月5日号掲載の内容です。
森永 御社といえば、以前の「スカイパーフェクTV!」や現在の「スカパー!」など、有料で多チャンネルの衛星放送を行う会社としての認知度が非常に高いですよね。かくいう私もそんなイメージを強く持っていました。 米倉 そうなんですよね。まさにそこは弊社が課題としているところでして。 森永 実際は「宇宙事業」が営業利益の8割以上を占めているということで、驚かれる読者の方も多いかもしれませんね。 米倉 やはり「スカパー」の名前を冠している以上、B to Cが中心のメディア企業だと認識される方が多いのですが、もともとは日本通信衛星、サテライトジャパンなどの会社が行っていた宇宙事業こそが本流にあるんですよ。現社名についている「JSAT(ジェイサット)」はそれが由来です。 森永 有料放送がメインだと勘違いされると、“斜陽産業”として捉えられてしまうかもしれませんが、実は宇宙事業が核となっているからこそ、2023年度通期では営業収益1219億円、営業利益265億円と、過去最高益を達成された。 米倉 おっしゃる通りです。皆様に「本当は宇宙の会社なんだ」ということを認識していただくために、テレビCMも、「スカパー!」のキャンペーンを前面に押し出すより、タレントの芦田愛菜さんにご出演いただいたりして、宇宙事業のブランディングに重きを置いているところです。
「スカパー!」の現状
森永 実際、「スカパー!」を中心としたメディア事業は今、どのような状況なのでしょうか。外資系企業の参入など、有料放送を取り巻く環境は激化している印象があります。 米倉 たしかに放送も、宇宙と“両軸”を成すビジネスであることに違いはありませんが、今後も成長が見込めるような状況ではないことは認めざるを得ません。2015年には350万近くあった「スカパー!」全体の加入件数は、今は300万を切り、現在も減少傾向にあります。少子化も進む中、ここは見栄を張ってもしょうがない。 森永 ある意味で割り切っていると。 米倉 ただし、成長が見込めないだけで、今のメディア事業も、営業利益で40億円以上の黒字は確保しているんです。こうして「スカパー!」を求めるお客様がいる以上、われわれがやらなければならないのは、いかにコストを削減しながら事業を継続するかということに尽きます。ですから、元が取れないことからは手を引いて、“筋肉質”な事業体制にしていく必要がある。 森永 国内12球団のプロ野球公式戦を全試合生中継されていたり、サッカーも国内外の主要大会を放送されていたりしますが、これも撤退する可能性はあるということでしょうか。 米倉 今のところはしっかり採算が取れていますが、放映権料も高騰傾向にある中、それが続けられるのかどうかはしっかり見極めていかなければならない。場合によっては、撤退の可能性も考える必要があると思っています。 森永 漫然と事業を継続するわけではなく、緩んでいる蛇口を締めていくというわけですね。