なぜ?山根氏不正告発の第三者委員会結論は一部疑惑残しの「6勝3敗3分け」
ドン”山根明元会長の数々の不正が告発されていた日本ボクシング連盟の問題について調査していた第三者委員会が28日、渋谷区の岸記念体育館で会見を行い、調査結果並びに今後の改善策について報告した。同報告書は、同日、午前中に連盟に直接、提出された。「日本ボクシングを再興する会」が内閣府、スポーツ庁、JOCなどに告発した「12項目の問題」について調査がなされたが、ハッキリと不正が認定されたのは、「アスリート助成金の不正流用」などの6項目で「競技力向上事業助成金に関する不正な財務運営」など3項目については認めなかった。また告発のうち大きなウエートを占めていた通称「奈良判定」などの「審判不正」については「自主性が阻害された審判」と表現を変え一部を認定したが、組織的な不正に関しては認めず「灰色認定」に終わった項目もあった。梶谷剛・委員長は「山根明氏という特異な人物が長年に渡って独断専行で連盟を支配していた。それはボクシング愛でなく偏愛である」と断罪。組織のガバナンス欠如を指摘したが、山根元会長の個人的な金銭の不正については「疑いはあるが全体としてはあまりない」と曖昧な結論に終わり、約1か月半と、調査期間が短かったにしろ完全な問題解決とは言えない後味の悪い調査報告となった。
「6勝3敗3分け」ーー。それが“山根不正”を調査した第三者委員会が出した結論だった。 8月20日から告発状に記された「12項目」について調査を続けた第三者委員会は、この日、午前中に分厚い報告書を連盟の執行部に提出。その後、要旨をまとめた文書を用意して、梶谷剛委員長(弁護士)、板橋喜彦委員(弁護士)、若林直子委員(弁護士)、大場良明委員(行政書士)の4人が記者会見にて約2時間に渡って調査結果を明らかにした。 告発の内容を全面的に“クロ”と認定したのは、1「アスリート助成金の不正流用の教唆及び隠蔽」、2「試合用グローブ等の販売の不透明な独占販売」、3「山根会長の会長就任に介在した暴力疑惑」、4「国民体育大会の隔年実施競技への格下げ」、5「若年選手が自由に競技に取り組む可能性を阻害する決定」、6「全国高体連専門部の日本連盟に対する問題提起」の6項目だ。 第三者委員会は、8月20日に発足後、すぐに大阪の事務所を訪問。一部では問題書類などを処分したと言われていたが、「資料は散乱していた。あるべきものがないということはなかった」らしい。 山根元会長の聴取も大阪まで出向き、午後12時40分から17時過ぎまで半日かけて全員で行い、20人以上の関係者の聴取並びに銀行口座の通帳記録などの会計資料、パソコンに残ったデータ、音声データなどを入手して分析、調査を行ったという。 リオ五輪代表の成松大介選手へJSC(日本スポーツ復興センター)から交付されたアスリート助成金240万円を他2選手へ分配するように指示した山根元会長の行動を「指示があった」と認定。「会長として要領違反となることを認識すべきだったし十分に認識可能だった」としたが、その後、吉森専務理事と内海理事が成松選手に対して行った「隠蔽工作」は「組織的隠蔽工作ではなく不適切な隠滅行為」とし、160万円を成松氏に返金した事実も「返しても分配がなかったことにならないので隠滅にならないだろう。現状に戻してJOC、JSCからの厳格な処分(資格停止)を免れて軽減することであった」とした。返金した160万円は、内海理事が立て替えて支払い、後日、山根元会長が内海氏に返したという。 生々しい調査結果が出てきたのは、試合用のグローブを山根元会長と密接な関係にある「杉スポーツ」に独占販売させていた問題だ。平成24年1月から7月までは、山根元会長の孫名義の口座に代金を振り込ませていたが、委員会は、山根元会長の親族の協力を得て、その口座のお金の出入り記録を入手。その間、一千数百万円強の入金があり、仕入れ先への支払いを除くと、粗利が約620万円ほど見込まれ、そのうち約558万円が使途不明となっている。親族に26万円が振り込まれるなど「小分けでおろされ、どこへいったかわからない」(板橋委員)。この間、通帳(キャッシュカード)の管理は誰がやっていたのかとの聴取に、山根元会長は「俺や」と素直に認め、同口座からお金が引き下ろされたATMのエリアも山根元会長の自宅の近所で、板橋委員は「この半年に限っては、自分でおろして使っちゃったのかな」と推測した。 それ以降は「杉スポーツ」の経営者である前川哲也氏の口座に切り替わり、山根元会長への送金は一切なかった。ただ、50万円単位で現金は引き下ろされており「それが山根氏に渡されたかどうかはわからない」とした。前川氏は、山根元会長への現金を渡したことを否定している。同委員会は「この問題で誰が一番損をしたのか。そもそも価格設定が仕入れ価格よりも1万円ほど高いのが問題」としたが、孫の口座から約558万円も引き下ろしていた時点でアウトだろう。連盟会長の立場を利用した不正な利益取得だ。