OMO店舗「オンワード・クローゼットセレクト」 地方都市で手応え
OCSはブランドの垣根を越えてオンワードグループの商品を幅広く扱う業態だ。自社EC「オンワード・クローゼット」のリアル店舗版といったおもむきであり、得意とするていねいな接客を掛け合わせる。
ブランド単店であれば「23区」を目的に来店する客は「23区」しか買わない。しかしOCSでは「23区」を求めてきた人が、ついでに「ICB」「J.プレス」「アンフィーロ」を買うことも珍しくない。オンワード樫山の前川真哉OMO Div.長は「(川徳のような)地方の百貨店は販売員とお客さまが長くて深い関係を築いている。例えば信頼感のある『23区』出身の販売員が他のブランドの商品を勧める。それを気に入って新たにファンになってくださるケースも少なくない」と説明する。
またOCSでは自社ECの商品を取り寄せるサービス「クリック&トライ」も導入している。川徳のOCSでも、ECで気に入った商品を取り寄せる人が多い。OMOが確立される前は、人気商品の在庫は大都市の百貨店の手厚く配分され、客数が少ない地方都市の百貨店にはサイズやカラーで品切れを起こしがちだった。リアル店舗と自社ECの在庫の一元化、そして取り寄せサービスによって大都市と地方の格差を解消する。
OCSは開始から3年半で、同社内で最大の店舗数の業態になった。現在のところ百貨店とショッピングセンターの割合が半々くらい。オンワード樫山は百貨店を主販路とし、アッパーミドルの価格帯を得意としてきたが、OCSは郊外のショッピングセンターでも実績を上げている。近隣に百貨店がなく、実際のオンワードのブランドに触れる機会のなかった潜在顧客へのアプローチも可能になった。
同社はグループ国内売上高に占めるEC化率が約3割。特筆すべきは、その約9割が自社EC「オンワードクローゼット」であることだ。自前のデジタル基盤を生かることがOMOを推進する上での強みになっている。OCSを地方に出店するに際しても、商圏の会員数や購買実績を踏まえて決めている。