高校サッカー選手権で2連覇を狙う青森山田 それを阻むのは静岡学園か前橋育英か ハイレベルな注目校を紹介
【前橋育英vs米子北は注目カード】 ――次のブロックに行きましょう。ここの注目はプレミアリーグ所属で、日本一の経験を持つ前橋育英(群馬県)でしょうか? 土屋 昨年からのスタメンが半数以上残っていたのですが、プレミアリーグEASTは開幕3連敗からのスタート。インターハイ予選も準決勝で負けて、連続出場が6でストップしました。ただ、負けを機にキャプテンのMF石井陽(3年)を中心に「自分たちの足元を見つめ直さければいけない」とネジを巻き直した結果、秋は公式戦で7連勝。プレミアリーグEASTも6位で終え、チームとしての自信をつかんだのではないでしょうか。 FWオノノジュ慶吏(3年)とFW佐藤耕太(3年)が点を取れるようになりましたし、シーズン当初はBチームだったDF鈴木陽(3年)がセンターバックに入ってから、公式戦で負けなくなった。小柄ですがすごく戦えて、ボールも動かせる守備のキーマンです。 森田 米子北(鳥取県)と対戦する初戦は注目カード。米子北のキャプテンのFW鈴木颯人(3年)と前橋育英の石井は中学時代、前橋FCでチームメイトだったため、大舞台での再会に燃えていました。カギとなるのは、もうひとりの前橋FC出身選手であるMF柴野惺(3年)の存在です。インターハイでベスト4になりながらもプレミアリーグWESTの後期で苦しんだのは、中盤でボールを落ち着かせる彼がケガしたから。選手権に間に合うかわからなかったのですが、練習復帰して登録メンバーにも入ったため、彼のコンディションが戻れば、より面白い試合になるはずです。 土屋 今年のインターハイでベスト4に入ったチームの中で、唯一今回の選手権に出てくるチームなので、夏からの継続性にも期待したいです。
【スタイルを継続する魅力的なチーム】 森田 このブロックで推したいのは帝京大可児(岐阜県)です。仲井正剛監督が「今年の代はいい。経験値で言えば全国上位を目指さなければいけない」と自信をのぞかせる代で、エースのFW加藤隆成(3年)やキレのあるドリブルが売りのMF明石望来(3年)を筆頭に、前年からスタメンを張る選手の多さが強み。帝京大可児らしい、ボールを大事にしながら積極的にゴールを目指すサッカーに磨きがかかっています。 土屋 全国に出るとコンスタントにベスト16まで出てくるチームで、毎年いいチームを作ってくる印象です。 森田 スタイルを継続しているので、「帝京大可児のサッカーがやりたい」と力のある選手が集まってくるのが、このチームの強みなのかなと思います。 土屋 積み重ねによっていい選手が集まり、強くなるサイクルは堀越(東京都A)でも感じます。昨年の選手権でベスト4に入ったのは大きなトピックスですが、ボールと人が動くきれいなサッカーをみんなで作り上げていくスタイルとボトムアップに魅力を感じ、その前からいい選手は集まり始めていました。 今年はインターハイ予選のベスト8で負けたのですが、DF森奏(3年)を筆頭に昨年の4バックがそのまま残っているのは強み。キャプテンのDF竹内利樹人(3年)はケガで離脱する期間が長かったのですが、結果的にチームの自主性が出た気がします。6月末の東京都1部リーグ以降は、東京都の公式戦で一度も負けていません。駒沢陸上競技場で2試合できるアドバンテージもあるので、期待しています。 森田 堀越と初戦で対戦する津工(三重県)も推したいチームです。2年前の選手権で成立学園(東京都)との開幕戦を経験してから選手の目線が変わり、全国大会に出て満足していたところから"全国に出て勝つんだ"となりました。片野典和監督が予選時に言われていたのは応援の質の変化で、選手が一生懸命応援するようになったとか。今年はスタメンのうち8人が2年生という若いチームですが、試合に出られない3年生がスタンドで頑張っているので、そうした部分にも注目してほしいですね。 土屋 今年もまた東京勢との対戦。相手は違いますが、リベンジに燃えてそうですね。予選の勝ち上がりを見ると、2度もPK戦で勝っているんですね。 森田 守備が堅く、GK中尾楓汰(3年)は184cmの高身長を生かしたセービングが売り。3バックの真ん中に入るDF山崎蒼葉(2年)もスピードが抜群で、対戦相手の監督が「彼みたいな選手が世代別代表に入らなければいけない」と絶賛するほど能力が高く、注目です。 ――他に注目チームはありますか? 森田 愛工大名電(愛知県)も予選で見た際にインパクトの強かったチームで、アグレッシブにゴールを目指すサッカーが特徴です。ただロングボールを蹴るのではなく、技術の高い選手がゴールを目指したアクションを繰り返し、ボールを失ったら素早く切り替えて高い位置で奪い返す。相手にとっては相当嫌なチームだと思います。 土屋 このブロックは明誠(島根県)や龍谷富山(富山県)など初出場のチームや、久しぶりの選手権に出場するチームが揃っているので、どこが勝ち上がってくるのか楽しみです。 大会展望 後編につづく>>
text by Morita Masayoshi