進駐軍に焼却迫られた戦時の書籍を守り抜いた椋鳩十 命の輝きを描いた児童文学者は平和な時代を巻き戻さぬために、図書館に「自由を守る防波堤」を託した
鹿児島市のかごしま近代文学館で9月29日、「敗戦後の追放図書と椋鳩十」と題した講演会があった。開催中の特別企画展「椋鳩十 それぞれの顔」の関連行事。石田忠彦・鹿児島大学名誉教授の講演に約50人が聞き入った。 【写真】椋鳩十
石田さんは戦後、日本に進駐した連合国軍が各県に天皇制や軍国主義に関する書籍類を焼却するよう求めたことを紹介。鹿児島県立図書館では処分を逃れるため、椋の前任の館長が対象の724冊を自宅に運んでいた。 1947(昭和22)年、館長に就いた椋は進駐軍に焼却を迫られたが拒否。戦時中に出版された書籍は政府の考えや国民に植え付けた方法などを研究するために将来必要と強く訴え、納得させた。石田さんは「椋さんの勇気のおかげで追放図書は今も閲覧できる。人間に自由を与える中心は図書館だという考えがうかがえる」と指摘した。 聴講した阿久根市の折多小教諭、嶋田ひとみさん(54)は「子どもたちに、椋さんは図書館の大事な本を守った勇気のある人なんだと教えたい」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島