利下げを始めた欧州中央銀行 FRBと同様に雇用確保重視、日銀の利上げ方向と対照的だ
一方、日銀は典型的な後者だ。インフレ率は当分の間目標2%から大きく逸脱する環境ではないので、直ちに利上げすべきではない。
しかし、「円安悪者論」もあって、日銀の利上げへの前のめり感はなくならない。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、「円安は日本に有利で好機なのに何を騒いでいるのか」と冷ややかだ。これは政府とマスコミの滑稽な対応を揶揄(やゆ)したものだが、国内メディアはまともに言及できない。
最近は、新手の罠(わな)もある。筆者が円安によって外国為替資金特別会計の含み益があることを「外為埋蔵金」と言ったら、日銀が保有する上場投資信託(ETF)の含み益を「日銀埋蔵金」として、売却を示唆する向きもある。ただし、これは金融引き締めであり、利上げになるので要注意だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)