吉沢亮、ろう者の俳優・忍足亜希子から手話を褒められ感激「ぼくが生きてる、ふたつの世界」で親子役
きこえない母ときこえる息子が織りなす物語を繊細なタッチで描く「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の完成披露上映会が9月5日、都内で行われた。作家・エッセイストの五十嵐大による自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」を映画化。主演の吉沢亮、共演する忍足亜希子、呉美保監督(「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」)が出席し、作品に込めた思いを語った。 【フォトギャラリー】吉沢亮、その他の写真 五十嵐大(吉沢)は宮城県の小さな港町で、耳のきこえない両親のもとで愛情を受けて育った。幼い頃は母・明子(忍足)の“通訳”をすることも当たり前の日常だったが、次第に周囲から特別視されることに戸惑いやいら立ちを感じるようになり、20歳になると、複雑な心情を持て余したまま逃げるように上京し、大都会でアルバイト生活を始めるが……。 コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子どもという意味)の青年を演じた吉沢は、「特殊な環境ではあると思うんですけど、描かれているのは家族の関係性や親子の愛情といった、普遍的なテーマ。共感できる部分も多かった」と語り、「気持ちは伝えないと伝わらない。伝えるって大事だなと思ってもらえれば」と観客にメッセージを送った。 本作では、母親役の忍足、父親・陽介を演じる今井彰人をはじめ、ろう者の登場人物にはすべてろう者の俳優を起用。舞台挨拶に登壇した忍足は、手話通訳者と介し「中学1年生になるコーダの娘がいるので、重なる部分もあった。台本を読みながら、泣きそうになったが、我慢して読み終えた。いろいろな“世界”があると感じてもらえれば」と振り返った。 また、忍足が「吉沢さんはすてきな息子。手話を取得していて感動しました」と語ると、吉沢は感激しきりで、「僕のためにわかりやすくしてくれているのか、忍足さんと今井さんの手話はすんなり入ってきた。そこに愛情を感じましたし、温かい両親だなと思いました」と感謝を示していた。 本作が9年ぶりの長編映画となる呉監督は、「育児と向き合いながら、いつか映画を撮れたらとふんわり思っていた」といい、吉沢の起用については「美しい人なんですけど、その中に美しくない何かがあって、それを自分の目で見たくなった。この役は、まさにフィットしていて、相性がいいんじゃないかと思った」と説明。また、忍足については「一度お会いしたときに、あるシーンを演じていただき、この人に演じていただこうと思った」と語った。また、脚本を手がけた港岳彦(「正欲」)とは「以前2本企画を進めていたが、成立せず、今回が3度目の正直。成立させたい一心だった」といい、念願のタッグに感無量の面持ちだった。 「ぼくが生きてる、ふたつの世界」は、9月20日から全国で順次公開。バリアフリー上映も実施される。