【高校サッカー選手権】「チームとしての一体感では聖望のほうが上だった」夏の全国王者・昌平が4失点で準々決勝敗退
11月2日、浦和駒場スタジアムで行われた第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選の準々決勝で、令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)で初の頂点に立ち、全国選手権との2冠を目指した昌平が、3-4で聖望学園に逆転負けし、ベスト4を前に姿を消した。昌平が準決勝進出を逃すのは、3回戦で武蔵越生に敗れた第100回大会以来となる。 【フォトギャラリー】準々決勝試合風景 4失点も信じ難い数字だったが、夏のチャンピオンの準々決勝敗退もまた、想像できなかった。 いつものようにボールを握り、守両SBが攻撃参加し、CBが正確なフィードを敵陣に差し込み、よどみない攻撃が始まった。 U-18日本代表で主将の大谷湊斗(3年)を中継基地とし、長璃喜と山口豪太(ともに2年)の両U-17日本代表や三浦悠代(3年)といった看板MF陣が、軽やかでいながら力強いドリブルとパス交換、サイドアタックで進入してきた。仕掛けの美学を誰もが抱く。最前線には総体で4得点のエースFW鄭志鍚(3年)がにらみを利かせる。 前半9分、長の左からのパスを預かった左SB安藤愛斗(2年)が、豪快な一撃でネットを揺らし先制。早々に主導権を握り、このまま押し切るかと思われた。それほど昌平の攻撃陣は才能豊かなのだ。 ところが前半16分と22分、いずれも右CKのボールを遠いポストからヘッドで折り返されて連続失点。さらに25分、ショートカウンターから自陣左サイドを崩されて3点目を失ってしまう。 ぼう然状態だという玉田圭司監督は「セットプレーを最も警戒し、練習でも自覚を持って取り組んでいたのですが……」と悔しがり、大谷も「試合前からセットプレーにも気を付けていたが、そこから2点取られて相手に勢いを与えペースを持っていかれた」と残念がった。 後半7分、鄭が大谷のスルーパスを右で預かってゴール左隅に決めて1点差としたが、24分に許した4点目が致命傷となる。後半のアディショナルタイムは7分もあり、その5分に大谷が鄭のシュートのこぼれ球に反応し、鋭い弾道の一撃を突き刺したものの時すでに遅し。 タイムアップの笛が鳴ると、白色のユニホームの多くがピッチに倒れ込む。Jリーグ清水エスパルスへの加入が内定しているGK佐々木智太郎(3年)は、泣きながらドレッシングルームへ引き揚げ、応援団へのあいさつを終えた大谷はずっとうつむいたままだった。 「心のどこかに勝てるだろう、という気持ちがあったと思う。個々の力ではうちが勝っていたが、チームとしての一体感では聖望のほうが上だった。決定力不足もあるが、相手は点を取らせないという気持ちが際立っていた。僕らも勝ちたい気持ちは強かったけど、そこでも相手のほうが上だったと思う。夏に続いて優勝カップを掲げたかったが、それができなかったのは自分の責任」 こう言ってようやく声を絞り出すと、大谷の目から大粒の涙がこぼれ落ちてきた。 勝負ごととは本当に難しいものだ。夏に強くても秋を迎える頃にはどのチームも力をつけ、頂点に立つのは容易な作業ではない。 かつて大宮東、西武台、武南がインターハイで準優勝しながら、選手権予選ではいずれも勝てなかった。 玉田監督は「リーグ戦とトーナメントの違いをはじめ、人工芝に慣れているが天然芝はまた違った感触がある。雨も降っていた。いろんな条件があると思いますが、勝たせられなかったのはすべて自分の責任です」と述べ、大谷の言葉を伝えると「そうですか。私もハーフタイムに戦う姿勢、勝ちたい思いで差があると指摘したのですが」と唇をかんだ。 しかし最後は大谷と同じく、「他力本願ですが、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ2024 EASTで(優勝する)可能性があるので、気持ちを切り替えたい」と気丈に話し、暫定4位につけるプレミアリーグEASTの残り3試合にこの悔しさをぶつける覚悟を示した。 (文・写真=河野正)