【台湾を映画で巡る旅へ】エドワード・ヤンの映画ロケ地や「台北之家」など台北の街を歩く
『台北ストーリー』の舞台となった「迪化街」
エドワード・ヤンの長編二作目となる『台北ストーリー』は、台湾ニューシネマの仲間であったホウ・シャオシェン監督が製作を担当、さらに人気歌手のツァイ・チンと共に主演もした映画。幼なじみとして台北に育った男女が、それぞれに未来への夢を抱きながら次第に行き詰まっていく様子が、急成長を遂げる台北の景色とともに描かれる。ホウ・シャオシェンが演じるのは、迪化街(ディーホアジエ)で布屋を営むアリョン。幼なじみのアジン(ツァイ・チン)が働く松山区のオフィス街とは対照的な、昔ながらの街並みが残る問屋街だ。この歴史ある街で育ったアリョンとアジンは、アメリカへと渡り新生活を始めることを夢見ながら、古いしがらみに縛られ身動きが取れなくなっていく。 布屋から漢方薬、乾物など、さまざまな種類の問屋がずらりと並ぶ迪化街は、観光にはぴったりの場所。街の中心にある「永楽市場」の2階、3階は布類を扱う問屋街、1階は食料品を扱う市場になっていて、野菜や魚、肉を売る店から、麺や寿司、美味しいおこわを扱う食堂などがずらりと並び、平日でも買い物客や食事を楽しむ人たちで賑わいを見せる。 映画が撮られた80年代とはだいぶ景色は変わったはずだが、街には今も『台北ストーリー』に映っていたようなレトロな建物がいくつも発見できる。手軽な食堂はもちろん、古いビルを改装したカフェやレストランが多くあるので、お土産を選びながら、食事をしたりコーヒーを飲んでゆったりするのもおすすめ。
台北の映画街「西門町」
多くの作品が台北市内を舞台にしているエドワード・ヤンに対し、盟友ホウ・シャオシェンの映画の多くは、田舎や地方都市で撮られている。この違いは、それぞれの出自によるものかもしれない。ホウ・シャオシェンの映画のロケ地として有名なのは、『悲情城市』(89)の舞台であり、今や観光名所にもなっている九份や基隆。子供たちが祖父の家で過ごす夏休みを描いた『冬冬の夏休み』(84)の舞台は銅鑼。 ホウ・シャオシェン自身の幼年期をモデルにした『童年往時』(95)では、監督が少年時代を過ごした高雄市の鳳山が舞台となっている。一方少年少女の切ない恋を描いた『恋恋風塵』(87)は九份を舞台にした映画ではあるが、この山村で育った少年ワンと、幼馴染の少女ホンがやがてそれぞれに台北へ上京し、都会暮らしをする様子がたっぷりと描かれている。 『恋恋風塵』の台北でのロケ地の一つが、西門町にある「西門紅楼」。もともと官営市場として栄えた煉瓦造りのこの建物は、一時期「紅樓劇場」という映画館として使用されていて、劇中では、裏側部分がホンの働く仕立て屋として使用された。現在は建物内は全面的にリニューアルされ、雑貨屋などが入る文化施設として使用されている。 この西門町付近は、ガイドブックなどでは「台北の原宿」と呼ばれるほど、若者向けの店が立ち並ぶ繁華街だが、昔は映画館街として栄えた場所で、今でも、大型の映画館が立ち並んでいる。60年代末から70年代初頭の台北を描いた『恋恋風塵』では、ワンの友人が勤める映画館が登場するので、もしかしてここも西門町あたりが舞台だろうか、と調べてみたら、どうやらロケ地に使われたのは大同区のあたりのようだ。